わかりやすい経絡経穴学

一般社団法人和歌山県鍼灸マッサージ師会副会長・和歌山県立和歌山盲学校非常勤講師

宮本年起

 


目次

はじめに

T 総論

1.経穴とは

2.経絡とは

3.経穴部位

 

U 各論

1.十四経の流注

2.361の正穴

3.奇穴について

おわりに 

                  


はじめに

 私は鍼灸指圧師です。大阪市にある関西鍼灸柔整専門学校(現在の関西医療学園専門学校)で鍼灸師・指圧師としての知識と技術を学び、宮本鍼灸指圧院の二代目院長として30数年間、臨床に従事しています。また、ご縁を頂いて、10年前から和歌山県立和歌山盲学校の理療科において理療経営学という教科を担当しています。盲学校理療科は、視覚にハンディキャップを持つ人たちを鍼灸マッサージ師として養成する職業訓練コースです。鍼灸師(正確には「はり師」および「きゅう師」)、もしくはマッサージ師(正確には「あん摩マッサージ指圧師」)の免許を得るためには、鍼灸大学、鍼灸マッサージ専門学校、盲学校等で3年の課程を修了したのち、国家試験に合格しなければなりません。そのため理療科で学ぶ科目は、実技科目を除いて、そのほとんどは国家試験受験科目なのです。しかしながら私の担当する「理療経営学」は直接、受験に関わるものではなく、晴れて国家免許を得たあと開業し治療院を経営してゆくのに必要な知識を授けるものです。

「学生が将来、治療師として一人前になるために必要と思われることは、何でも教えてやっていただきたい。」

と、そういわれて私はこの勤めを引き受けました。

 盲学校非常勤講師を引き受けたのには理由がありました。今は亡き父が、

「我々の仕事は多かれ少なかれ視覚障碍者の職域を侵している。だからその罪滅ぼしのためにも、視覚にハンディキャップのある人々のためにお役にたてることがあれば、進んでそれを為すべきだ。」

と生前、口癖のように申していたからです。私がこのご依頼を承諾したことを亡父は喜んでくれていると思います。

 さて、盲学校の仕事を引き受けるにあたって盲学校側から、こんな申し出がありました。

「理療経営学は週に2時間の授業科目です。せっかく盲学校に足を運んで頂くのですから、これ以外にぜひこの科目を教えたい、というものがありましたら、併せてお願いしたいのですが…」

 その申し出を受けて迷わず私が選んだのが経穴学(正確には「経絡経穴学」)でした。鍼を刺し、灸をすえ、指圧でおすツボとツボスジ。治療師と患者の接点であり、からだの反応部位・診断部位でもある経穴と、経穴が所属し、そこにならぶ経絡を、学生たちと共に、もう一度勉強しなおしたいと考えたのです。

 それからはや十年の歳月が流れました。私の十年間に及ぶ経絡経穴学の授業のエッセンスをお示しすることで、いささかでも新しいヒントを提供できれば望外の幸せと考えて、浅学菲才を顧みず、この小文をしたためるものです。

T 総論

1.   経穴とは

1)経穴総数の変動

 経穴(けいけつ)すなわちツボは、鍼灸や漢方的手技療法の治療点であり、また身体の反応点・診断点です。ツボは全身に合計365あるとされています。二千年前の古典、黄帝内経に「気穴365、以て一歳を為す。」とあります。その意味するところは、「気の巡る穴、すなわちツボは365あって、一年間の日数と同じだ」ということです。ところが現在、私が正穴(せいけつ=正式なツボ)として盲学校で教えているツボの数は、これより4個少ない361です。さらに申しますと、5年前までは354でした。いったいこれはどういうことなのでしょうか?

 その秘密は、教科書の準拠する漢方古典にあります。黄帝内経は365という総数を明示しながら、そのリストは明確に示していないのです。そこで我が国の教育機関では、ずっと後の古典、すなわち14世紀半ばの元の時代に書かれた十四経発揮(じゅうしけい・はっき)を基にしてきました。この書物には354のツボについて系統だった記述がなされていて、テキストとして用いるのに、よりふさわしかったのです。ところが、中国はあくまで黄帝内経を原典とし、韓国もまた独自の立場を持っていました。日本・中国・韓国という東洋医学を実践する主だった3つの国で、経穴の認定、その名称と部位に関して、必ずしも一致していなかったのです。

2)経穴部位の統一

 10年前の平成15年(私が盲学校へ勤めるようになった年なのですが)に、世界保健機構(WHO)の要請で日中韓三か国が「第一回経穴部位国際標準化に関する非公式諮問会議」のテーブルにつきました。その後、三か国の持ち回りで会議は重ねられて、平成18年3月の第6回会議において日中韓最終案が確定しました。同年の11月にWHO西太平洋地域事務局のお膳立てによって茨城県つくば市で開かれた国際会議には、日本・中国・韓国の3カ国に、モンゴルやベトナムなど6カ国と2組織が参加し、経絡・経穴の名称と記号表記、部位の統一がなされました。最後まで統一が困難であった6つの経穴部位については投票で決着しました。そしてこれは、単なる日中韓三か国の合意に留まることなく、「経穴に関する国際標準」として認められたのです。

3)経穴部位統一についての疑問

さて、こう述べて参りますと、いくつかの疑問がわくのではないでしょうか。疑問点を整理してみましょう。

〈WHOがなぜ、この問題にそこまで労を費やしたか。〉

 その答えはWHOのホームページをご覧いただくと理解できます。そこには、鍼灸の適応症として随分たくさんの病症名がリストアップされているのです。WHOは鍼灸を代表とする東洋医学を、高く評価しているのです。世界の人々の健康を守るためには、最新の医学の進歩を反映する近代的な病院をどんどん建設するのが理想です。でも経済的に余裕のない国にとっては、それは困難です。鍼灸は最小限の費用で、かなり高い効果を期待できる、いわゆる「コストパフォーマンスの優れた医術」であると、WHOは考えてくれているのです。

〈ツボの位置が変わることで不都合はないのか。〉

我が国では、平成18年に定められた国際標準が、平成21年度から教育現場に反映し、教科書の記述内容がこれに沿ったものに改訂されました。この機会に、晴眼者の教育機関と盲学校の経穴学テキストが統一されたのは意義深いことでした。ただ、それによって相当多数のツボの位置が変わりました。こうした経穴部位の改定は、いくつかの不都合を引き起こします。平成24年2月実施の第20回国家試験を皮切りに、これ以降国家試験をパスした者は、それまでと違う経穴部位を学び、身につけています。今後、研修や研究発表の折には、それが新しい経穴部位に基づくのか、旧部位かを確認する必要があるでしょう。それでも国際標準が定められたことは、大きな前進だと思います。

〈ツボの位置のずれは治療効果に影響するのではないか。〉

鍼を刺し、灸をすえ、ツボ指圧を施す目標である経穴は、皮膚上の動かしがたい一点であるはず。その位置が多少なりともずれれば、治療効果にも影響するのではないのか。そういう感覚はよく理解できます。でも私は、「標準経穴部位が多少変化しても、臨床的には大した問題ではない」という実感があります。

その理由はいくつかあります。

第一の理由は、経穴の位置は絶対的・固定的に決まっているのでなく、個人差があると共に、同じ人でもその時の体調で一定の範囲で移動するからです。それゆえ標準的な経穴部位を目安に、その周辺の最も反応の強い場所を選んで決定する、といったことは臨床上普通に行われています。

第二の理由は、経穴の本体は決して皮膚の表面にあるのではない、ということです。ツボは皮下の、それぞれの深みにあります。刺入した鍼の先、灸の熱感、そして指圧の圧迫は、いずれもツボの深さにまで達しなければツボ本来の効果が発揮されません。すなわち、正確にツボを取ることは、とりもなおさず、正確に鍼を刺し、正確に灸をすえ、正確に押圧することなのです。

2. 経絡とは

1)経穴は経絡上に並ぶ

 経穴はバラバラに点在しているのではありません。それらは経絡(けいらく)上に並んでいます。経絡、それは「東洋医学が想定する生体エネルギーである気血の流れる通路」です。気は無形のエネルギー、血は液性のエネルギーです。  

盲学校での最初の授業で、私はいつも学生たちがイメージしやすいように、「気は神経の中を流れる電気信号を、血は血液・リンパを思い浮かべればよい」と説明します。しかしだからといって「経絡=神経・血管・リンパ管」ではない、と釘を刺します。経絡の通るところには、確かになんらかの神経・血管が通っていますが、神経・血管の走路を、経絡がすべてカバーしているわけではないからです。経絡は、より簡明にその走行経路が明示されています。からだを左右対称に分ける前後の中心線(=正中線)上の2つの経絡と、手足12本の経絡、合計14本です。

2)十四経

 経絡の総数は14です。そして大切なことは、正穴はいずれかの経絡に所属しているということです。

@  督脈・任脈

 まずは正中線(せいちゅうせん)上の経絡である督脈(とくみゃく)と任脈(にんみゃく)。正中線とはご承知の通り、「からだを左右対称に分ける線」つまり頭部を含めた胴体の中心線のことです。督脈は肛門の後ろから後正中線を頭頂までのぼり顔の中心を上歯茎までおります。おおざっぱに「後正中線」ととらえて下さい。任脈は「前正中線」です。会陰部(生殖器と肛門の間)から下唇の少し下まで上ります。この2経は、胴体・頭部の経穴の縦軸上の位置を示すものさしの働きをも担います。

A  手足12経

 次いで手足12経。手の三陰三陽、足の三陰三陽で合計12経です。12の経絡は左右対称で、順につながって一つとなります。経絡が左右対称であるから、そこに並ぶ経穴もすべて左右対称です。ここで「手の経絡」「足の経絡」というのは上肢・下肢に中心のある経絡、という意味です。手の経絡には、上肢にすべての経穴が収まっているものもありますが、胴体や顔面・頭部にツボが広がっているものがほとんどです。足の経絡はツボが下肢だけに収まっているものはなく、顔面・頭部・胸部・腹部・背部・腰部にツボが分布します。

〈解剖学的姿位〉

 さて12経絡のつながりを説明するために、ここで基本姿勢=解剖学的姿位をご理解頂く必要があります。それは、からだを正面に向けて、足のつま先を正面に、そして(ここが大切なのですが)腕を下げて掌を前に向けた姿勢です。これを基本姿勢としますと、日常的には「手の内側(掌側)」と呼んでいる側は前、「手の外側(手の甲側)」は後ろ、となります。また手の親指側が外側(または橈骨側という意味で橈側)、小指側が内側(または尺骨側という意味で尺側)となります。これに対して、足の内・外は日常語と同じで、足の親指側が内側、小指側が外側ですので、手とはちょうど逆になることに注意してください。

〈陰陽〉

 次に重要なのは経絡の陰陽です。四つん這いの姿勢で、南中した太陽が照らす部分が陽で、照らさないのが陰と言われます。概ねそれでよろしいのですが、陽の経絡が胸腹部を通る重要な例外(後述)もありますので十分ご注意下さい。

〈手足の12経のつながり〉

 手足12経はこれから申し上げる順番に次々とつながって、第12経がまた最初の経絡につながり、限りなく循環してゆきます。

ではつながり方を実技的に説明します。片方の掌を反対側の右腕の付け根、肩関節の前あたりに当てて下さい。掌で上肢前面を撫で下ろして指先へ。これを1番目とします。

手の指先でくるりと反転して(このとき陰から陽に転じることに注意)手の甲から上肢後側を撫で上げて下さい。これが2番目。

このあと首・頭・顔をひと撫でして、胴体を経て下肢の陽の部分を撫で下ろし、足の指先に至ります。これが3番目。

足の指先で反転して(ここで陽から陰に転じます)下肢の内側を撫で上げ、腹・胸を上って元の肩関節の前あたりに掌が戻って一段落。これが4番目。

ここまで、1番目から4番目を手、足、陰、陽という言葉だけを用いて端的に表しますと、「手の陰・手の陽・足の陽・足の陰」となります。このサイクルを3回繰り返します。1周目は「手は外側、足は前」、2周目は「手は内側、足は後ろ」、3周目は「手足とも真ん中」です。では、手足12経絡のつながりの全体を確認しましょう。

手の陰の外、手の陽の外、足の陽の前、足の陰の前;手の陰の内、手の陽の内、足の陽の後ろ、足の陰の後ろ;手の陰の中、手の陽の中、足の陽の中、足の陰の中。

これを経絡名で示すと、肺経、大腸経、胃経、脾経;心経、小腸経、膀胱経、腎経;心包経、三焦経、胆経、肝経

各経絡には陰陽名が付されています。第1周の陰は太陰、陽は陽明。第2周の陰は少陰、陽は太陽。第3周の陰は厥陰、陽は少陽。手・足、陰陽名を先ほどの経絡名にかぶせるとフルネームとなります。

手の太陰肺経、手の陽明大腸経、足の陽明胃経、足の太陰脾経;手の少陰心経、手の太陽小腸経、足の太陽膀胱経、足の少陰腎経;手の厥陰心包経、手の少陽三焦経、足の少陽胆経、足の厥陰肝経

3. 経穴部位

1)   経穴の位置は経絡の流注上の一点として示される。

 先に述べたように、経穴の本体は皮下の一定の深みにあると考えられます。適切な方向・深さの鍼を刺し、適切な大きさ・数の灸をすえ、また適切な押圧を加えたときに、その鍼尖(しんせん=鍼の先端)、灸の透熱(とうねつ)、圧迫が及ぶ一点こそがツボの本体です。しかしながら通常、経穴の部位は体表上の一点として示されます。また、経穴は経絡上の要所ですから必ず経絡の道筋、すなわち流注(るちゅう)上に存在します。

2)   経穴部位は相対的寸度で示される。

 具体例をあげましょう。督脈上のツボで頭のてっぺんにある百会(ひゃくえ)の部位。「頭部、前正中線上、前髪際の上方5寸」とあります。この「5寸」は1尺30.3cmの曲尺(かねじゃく)でしょう? それとも和裁で使われる137.9cmの鯨尺(くじらじゃく)でしょうか? 

 そのいずれでもありません。これは冷静に考えてみるとわかることですが、赤ん坊も相撲取りも、1寸の長さが一緒だと理屈に合いません。1寸=○cmという絶対的寸度ではなく、体の大きさによって比例的に定まる相対的寸度でなければなりません。

B  骨度法

先ほどの例ですと、正中線上で前髪際(髪の毛の前の生え際)から後髪際(同じく後ろの生え際)までを12寸とする、という約束事があるのです。こうした「特定部位専用のものさし(パーシャル・メジャーと私は命名しました)」を用いる方法を骨度法((こつどほう)と呼びます。主に骨の位置を手掛かりにしているからです。

 

 骨度法でよく用いるものを表にしておきます。

表:骨度法

部 位

長 さ

前髪際中点〜後髪際中点

12

両額角髪際間、両乳頭間

ともに9

胸骨体下端〜臍中央

8

臍中央〜恥骨結合上縁

5

左右の肩甲棘内端縁間

6

肘〜手首

12

尻のしわ〜膝裏

14

膝蓋骨の下端〜内くるぶしのてっぺん

15

膝裏〜外くるぶしのてっぺん

16

 

C  同身寸法

 骨度法を用いることで各部分の寸度を厳密に計測することができますが、より簡便に、どの部分であっても用いることできるものさしとして、手の指の幅を基準とすることが考え出されました。これを同身寸法(どうしんすんぽう)といいます。その主なものは以下の通りです。〈図1参考〉

 

 図1;同身寸法

@)親指の末節の関節の横幅を1寸とする。

A)人差し指・中指の2本の指の末節の関節の横幅を1寸5分とする。

B)人差し指・中指・薬指の3本の指の末節の関節の横幅を2寸とする。

C)人差し指・中指・薬指・小指の4本の指の中節の関節の横幅を3寸とす

(Cのみ用いる関節が末節でなく、中節=第2関節であることに注意すること。)

D  縦軸・横軸

 一般に、正中線上ではないツボの位置は、そのツボを通る横軸と縦軸を明らかにすると一点に定まります。胴体では督脈・任脈のツボを通る水平線が横軸として高さの基準となります。縦軸はそれぞれの経絡の通る道筋、すなわち流注(るちゅう)です。各論で述べる十四経の流注は、この意味でも重要です。

 

U 各論

1. 十四経の流注

 

1)   督脈・任脈

 正中線上のこの2つの経絡は出発点が同じです。共に、「胞中(小骨盤腔)に起こり、会陰部に出て、」とあります。泌尿器・内生殖器を擁する小骨盤腔に端を発し、肛門・外生殖器のある会陰部に出てくる。これが督脈・任脈共通の出発点です。その後は前後に分かれていきます。すなわち督脈は後正中線を頭のてっぺんの百会まで上りますが、その途中、「外後頭隆起直下に至り脳に入」り、百会から前正中線を上歯茎まで下ります。任脈は前正中線をひたすら上って下歯茎に至り、「顔面をめぐって目に入」ります。督脈・任脈は特別の呼び名があります。督脈は「陽脈の海」、任脈は「陰脈の海」。「海」は「すべてを包含するもの」を意味します。

2)   太陰・陽明(手足12経 第1グループ)

 胸から手、手から肩、肩から足、足から胸、の巡りの一周目(仮に「第一グループ」と呼びましょう)。陰は太陰、陽は陽明です。ここで第一・第二・第三の3つのグループに共通の、経絡間関係について触れます。各グループは、手の陰・手の陽・足の陽・足の陰、という順番につながります。同じグループの手同士、足同士は「表裏関係」をなします。また陰同士、陽同士は「上下関係」、もう一つ同じグループの陰陽異なる手と足の経絡、すなわち手の陰と足の陽、手の陽と足の陰は「対偶関係」をなします。表裏・上下・対偶は、いずれも密接な関係をもちます。これを総括しますと、同一グループの経絡はすべて互いに強い関係をもつということです。

@  手の太陰肺経

肺経は「中焦」すなわち上腹部に起こります。中焦から「下って大腸を絡(まと)い、かえりて噴門部をめぐり、横隔膜を貫いて肺に属する」とあります。ここで経絡の流注の共通要素をチェックします。

@)その経絡の名前についている臓腑(この場合は「肺」)に「属する」。

A)表裏をなす経絡の名前についている臓腑(「この場合は大腸」)を「絡う」。

肺経の流注の続きです。「肺から気管、喉頭をめぐって腋下に出て、」上肢前外側(「前」は掌側、「外側」は親指側)を下りて「母指外側端に終わ」ります。最後の「母指外側端」を詳しく言うと、手の親指の爪の付け根の小指から遠いほうの角、です。手足の指の爪の生え際の角を「爪甲角(そうこうかく)近位」といい、手足12経絡の末端のツボは1,2の例外を除いて、爪甲角の内方または外方1分にあります〈図2参考〉。次の大腸軽につなげるために、支脈が示指外側端に至ります。

 

 図2;爪甲角近位 内方・外方1分

 

A  手の陽明大腸経

 示指外側端に起こり、上肢後外側を上り、第7頸椎下に出ます。ここから「大鎖骨上窩を下り、肺を絡い横隔膜を貫いて大腸に属」します。支脈は顔面に上り、下歯に入り(ですので下の歯の痛みは大腸軽を用います)、鼻翼外方で足の陽明胃経につながります。

B  足の陽明胃経

 鼻翼外方に起こり、上歯に入り(上の歯の痛みは胃経を用います)、顔面をめぐります。支脈は横隔膜を貫いて、胃に属し、脾を絡います。本経は、胸部(前正中線の外方4寸=乳頭を通る垂直線)、腹部(前正中線の外方2寸)を下り、胃の幽門部に起こり腹部を下る支脈と鼡径部で合流、下肢前外側を下り、足の第2指外側端に終わります。膝下3寸の足三里から分かれた支脈は下って足の第3指外側端に出ます。足の甲で分かれた支脈は足の第1指内側端に至り脾経につながります。胃経は陽の経絡であるのに、胸部・腹部という陰の部位を通ることに十分注意が必要です。

C  足の太陰脾経

 足の第1指内側端に起こり、足内側を経て下肢内側を上り腹部(正中線外方4寸)を上り脾に属し胃を絡います。胸部(前正中線外方6寸)を上り、外に曲がり側胸部中央に至り、さらに舌根から舌下に広がります。上腹部から分かれた支脈は心中で心経につながります。

3)   少陰・太陽(手足12経 第2グループ)

@  手の少陰心経

 心中に起こり、心系(心臓、大動脈等)に属し、小腸を絡います。支脈は目につながります。本経は、心系から肺を経て、腋下から上肢前内側を下り小指外側端に至ります。

A  手の太陽小腸経

 小指内側端に起こり、上肢後内側を上り、肩関節・肩甲骨をめぐり、大鎖骨上窩を下って心を絡い、横隔膜を貫いて小腸に属します。大鎖骨上窩で分かれた支脈は顔をめぐり内眼角に至ります。

B  足の太陽膀胱経

 内眼角に起こり、頭頂部に上ります。ここで分かれる支脈は側頭部に広がります。本経は脳に入り後頸部を下り、脊中両側(後正中線外方15分)を下り、腎を絡い、膀胱に属します。さらに臀部・大腿後面を下り、膝窩に入ります。後頸部で分かれた支脈は脊中両側(後正中線外方3寸)を下り、臀部・大腿後外側を下り、膝窩で本経と合流、下腿後面から外くるぶしの後ろを通って、足の第5指外側端に至ります。

C  足の少陰腎経

 足の第5指の下に起こり、足底中央に向かい内くるぶしの後ろをめぐり踵に入ります。下肢後内側を上り、腹部(前正中線外方5分)、胸部(前正中線外方2寸)を上り、この途中、大腿後内側で分かれた本経は、「脊中を貫いて、腎に属し、膀胱を絡」います。本経はさらに上って舌根をはさんで終わります。胸部で分かれた支脈は胸中で心包経につながっていきます。

4)   厥陰・少陽(手足12経 第3グループ)

 肺・大腸・胃・脾、心・小腸・膀胱・腎、とここまでは比較的イメージしやすかったのですが、この第3グループに至って出てくる非日常的な用語、つまり「心包(しんぽう)」と「三焦(さんしょう)」に戸惑います。これについて私見を述べます。心包は心と一体をなし、君火(くんか=主君の火)である心に対して、相火(しょうか=宰相の火)と言われます。つまり心を心たらしめているエネルギーをさしていると考えられます。心包という名称から、それを心嚢と解釈する立場もありますが、むしろ心の活動を制御している電気系統こそが心包のイメージに近いのではないでしょうか。また三焦は上焦(じょうしょう)・中焦(ちゅうしょう)・下焦(かしょう)の総称で、胸部・上腹部・下腹部の臓器をすべてひっくるめたものです。心包を電気エネルギーとするなら、三焦は胃脾を中心として、すべての内臓の働きから生み出される熱エネルギーと考えることが、「焦」という字面から見ても、最も近いように思われるのですが、いかがでしょうか。そう考えると、この二つが形のない臓腑であることの本質が見えてくるように思われます。

 この第3グループの4つの経絡、心包・三焦・胆・肝は、臨床的な直感からしても、極めて調整力の高い経絡であることを申し添えておきます。東洋医学の理想が中庸であることを考えても、また現代医学が手を焼いている自律神経・ホルモン分泌・免疫とアレルギーなど、微妙なバランスを必要とする病症に活路を見出すためにも、これらの経絡は重要な役割を果たすと期待できます。

@  手の厥陰心包経

 胸中に起こり、心包に属し、三焦を絡います。支脈は胸をめぐり腋窩に至ります。本経は上肢前面中央を通り、中指先端に至ります。手掌中央からの支脈は薬指内側端に至り手の少陽三焦経につながります。

A  手の少陽三焦経

 薬指内側端に起こり、上肢後面中央を上り、肩から胸中に広がり、心包を絡い、三焦に属します。胸中からの支脈は、耳をめぐりこめかみから目の下方に至ります。耳の下からの支脈は耳を経て目尻に至ります。

B  足の少陽胆経

 目尻に起こり、側頭・側頸をめぐり大鎖骨上窩に入ります。耳の後ろからの支脈は、目尻に至ります。目尻からの支脈は胸中に至り、肝を絡い、胆に属します。さらに側腹部から鼡径部に出ます。支脈は大鎖骨上窩・腋窩・季肋部を下る支脈と股関節で合流します。そこから下肢外側を下りて足背から足の第4指外側端に終わります。足背からの支脈は足の第1指端に至り足の厥陰肝経につながります。

C  足の厥陰肝経

 足の第1指外側端に起こり、下腿前内側を上り、脾経と交わり膝・大腿内側中央を上り生殖器をめぐって下腹・側腹を経て胃をはさんで肝に属し、胆を絡います。さらに食道・気管、喉頭、目系(眼球、視神経)につらなり、百会で督脈と交わります。目系からの支脈は肺を通って中焦に至り、手の太陰肺経とつながります。手の三陰・三陽、足の三陰・三陽は合流することはあっても、上肢・下肢の流注で、内外、前後が入れ替わることはめったにないのですが、肝経は足首から下腿にかけて脾経の前を流れていて、膝に近いところで脾経の後ろに退きます。

2. 361の正穴

1)   督脈28穴(すべて正中線上)

 尾骨端と肛門の中央に長強(ちょうきょう)、仙骨裂孔に腰兪(ようゆ)、第4・5棘突起間に腰陽関(こしようかん)、2椎上がり第2・3腰椎棘突起間に命門(めいもん)、1椎上に懸枢(けんすう)、2椎上に脊中(せきちゅう)、1椎間隔で中枢(ちゅうすう)・筋縮(きんしゅく)、2椎上に至陽(しよう)、1椎間隔で霊台(れいだい)・神道(しんどう)、2椎間隔で身柱(しんちゅう)・陶道(とうどう)、1椎上の第7頸椎・第1胸椎棘突起間に大椎(だいつい)、項(うなじ)の陥凹(かんおう=くぼみ)のほぼ中央に瘂門(あもん)、後頭の出っ張り直下に風府(ふうふ)、出っ張りの上の陥凹に脳戸(のうこ)、後髪際から前髪際を1尺2寸として後髪際の上4寸に強間(きょうかん)、1寸5分間隔で後頂(ごちょう)・百会(ひゃくえ)・前頂(ぜんちょう)・顖会(しんえ)、1寸前に上星(じょうせい)、その5分(ごぶ)前(=前髪際の後ろ5分)に神庭(しんてい)、鼻尖(びせん、尖はてっぺん)に素髎(そりょう)、鼻の最下部で上唇との中点(上1/3の別説あり)に水溝(すいこう)、上唇上縁に兌端(だたん)、上歯茎で上唇小帯接合部に齦交(ぎんこう)。

2)   任脈24穴(すべて前正中線上)

 生殖器と肛門の中点に会陰(えいん)、恥骨上縁に曲骨(きょっこつ)、へそから恥骨上縁を5寸としてこれより1寸ずつ上に、中極(ちゅうきょく)・関元(かんげん)・石門(せきもん)・気海(きかい)・陰交(いんこう)、そしてへそは神闕(しんけつ)。へそから胸骨体下端までを8寸としてへそ(=神闕)から上へ1寸刻みで、水分(すいぶん)・下脘(げかん)・建里(けんり)・中脘(ちゅうかん)・上脘(じょうかん)・巨闕(こけつ)・鳩尾(きゅうび)、そして中庭(ちゅうてい)。胸骨体上で第4〜第1肋間の高さに、膻中(だんちゅう)・玉堂(ぎょくどう)・紫宮(しきゅう)・華蓋(かがい)。胸骨上窩の下方1寸に璇璣(せんき)、胸骨上窩中央に天突(てんとつ)、舌骨上方のくぼみに廉泉(れんせん)、下あご(オトガイ唇溝中央)に承漿(しょうしょう)。

3)   肺経11穴

 第1肋間の高さで前正中線の外方6寸(参考;前正中線から乳頭を通る垂線まで4寸)に中府(ちゅうふ)、その上1寸に雲門(うんもん)、腋窩横紋前端(肘の尺沢までを9寸として)の下方で上腕二頭筋外側縁3寸・4寸に天府(てんぷ)・侠白(きょうはく)、肘で上腕二頭筋腱外側に尺沢(しゃくたく)、尺沢と手首の太淵を結ぶ線上で手首の上7寸(=肘の下5寸)に孔最(こうさい)、手首の上1寸5分で長母指外転筋腱と短母指伸筋腱の間に列欠(れっけつ)、手首の上1寸で橈骨動脈と橈骨下端の盛上りの間に経渠(けいきょ)、手首で橈骨動脈拍動部に太淵(たいえん)、第1中手骨中点橈側(=外側)に魚際(ぎょさい)、母指爪甲角近位外方1分に少商(しょうしょう)。

4)   大腸経20穴

示指爪甲角の近位外方1分に商陽(しょうよう)、第2中手指節関節橈側の遠位・近位の陥凹に二間(じかん)・三間(さんかん)、第2中手骨中点橈側に合谷(ごうこく)、長・短母指伸筋腱間に陽渓(ようけい)、陽渓と肘の曲池を結ぶ線上で陽渓・曲池間を1尺2寸として陽渓から上へ3寸・5寸・8寸・9寸・1尺に偏歴(へんれき)・温溜(おんる)・下廉(げれん)・上廉(じょうれん)・手三里(てさんり)。肘を深く曲げて肘窩横紋外端の陥凹に曲池(きょくち)、曲池の後ろ上に肘髎(ちゅうりょう)、上腕を横に伸ばしたとき曲池から肩の肩髃までを1尺として曲池の上3寸上腕三頭筋外側縁に手五里(てごり)、曲池の上方3寸で三角筋前縁に臂臑(ひじゅ)、上腕を横に伸ばして肩先の前の陥凹が肩髃(けんぐう)、鎖骨と肩甲棘で作るくぼみの外端が巨骨(ここつ)、頸で、輪状軟骨の高さで胸鎖乳突筋の後縁に天鼎(てんてい)、甲状軟骨上縁の高さで胸鎖乳突筋中央に扶突(ふとつ)、督脈・水溝の外方5分に禾髎(かりょう)、鼻唇溝(びしんこう=ほうれい線)上で鼻のふくらみの高さ(別説は鼻の下の高さ)に迎香(げいこう)。

5)   胃経45穴

 瞳孔線(黒目の中心を通る垂直線)上、眼球・眼窩下縁間に承泣(しょうきゅう)、眼窩下孔部に四白(しはく)、鼻の下の高さに巨髎(こりょう)。口角の外方4分に地倉(ちそう)、咬筋上に大迎(だいげい)・頬車(きょうしゃ)・下関(げかん)。額角髪際の後方5分に頭維(ずい)、甲状軟骨上縁の高さ・胸鎖乳突筋前縁で総頸動脈拍動部に人迎(じんげい)、輪状軟骨の高さ・胸鎖乳突筋前縁に水突(すいとつ)、鎖骨内端に気舎(きしゃ)、前正中線の外方4寸(=乳頭線上)で、鎖骨上方の陥凹部に欠盆(けつぼん)・鎖骨下縁に気戸(きこ)、乳頭線上で第1〜第5肋間に、庫房(こぼう)・屋翳(おくえい)・膺窓(ようそう)・乳中(にゅうちゅう)・乳根(にゅうこん)。前正中線外方2寸、臍の上6寸〜1寸に、不容(ふよう)・承満(しょうまん)・梁門(りょうもん)・関門(かんもん)・太乙(たいいつ)・滑肉門(かつにくもん)。へその外方2寸に天枢(てんすう)、前正中線外方2寸でへその下1寸〜5寸に、外陵(がいりょう)・大巨(だいこ)・水道(すいどう)・帰来(きらい)・気衝(きしょう)。上前腸骨棘と膝外骨底外端を結ぶ線上で、大転子の高さに髀関(ひかん)、膝蓋骨底(膝の皿の上縁)から恥骨結合上縁までを1尺8寸として膝蓋骨底の上6寸・3寸・2寸に、伏兎(ふくと)・陰市(いんし)・梁丘(りょうきゅう)。膝蓋骨外下方の陥凹に犢鼻(とくび)、犢鼻と足首の解渓を結ぶ線上で犢鼻の下3・6・8・9寸に足三里(あしさんり)・上巨虚(じょうこきょ)・条口(じょうこう)・下巨虚(げこきょ)。条口の外方1横指(中指)に豊隆(ほうりゅう)。足関節前面中央の陥凹に解渓(かいけい)。第2中足骨と足根骨の中間楔状骨との間で足背動脈拍動部に衝陽(しょうよう)、足第2指付根後外側に陥谷(かんこく)、第2・3指間のみずかき後縁に内庭(ないてい)、足第2指爪甲角近位外方1分に児[(れいだ)。

6)   脾経21穴

 足の親指爪甲角の近位内方1分に隠白(いんぱく)、足親指付根内側の前・後に大都(だいと)・太白(たいはく)。太白から後ろへ撫でて指止まるところに公孫(こうそん)、内果(=内くるぶし)前下方に商丘(しょうきゅう)、内果尖(うちくるぶしのてっぺん)の上で脛骨内縁後際3寸・6寸・1尺に、三陰交(さんいんこう)・漏谷(ろうこく)・地機(ちき)。但し内果尖〜膝蓋骨尖(膝の皿の最上部)を1尺5寸とする。脛骨内側縁を指で撫で上げ止まるところに陰陵泉(いんりょうせん)。膝蓋骨内上2寸に血海(けっかい)、膝蓋骨内上〜鼡径部の衝門の上1/3で大腿動脈拍動部に箕門(きもん)、鼡径部で大腿動脈外方に衝門(しょうもん)。前正中線の外方4寸でへそ下4寸5分・1寸5分・へその高さ・へそ上3寸に、府舎(ふしゃ)・腹結(ふっけつ)・大横(だいおう)・腹哀(ふくあい)。前正中線の外方6寸で第5〜第2肋間に、食竇(しょくとく)・天渓(てんけい)・胸郷(きょうきょう)・周栄(しゅうえい)。脇の下からまっすぐに下ろした線(=中腋窩線)上で第6肋間の高さに大包(だいほう)。

7)   心経9穴

 腋窩中央で腋窩動脈拍動部に極泉(きょくせん)、肘上3寸で上腕二頭筋内側縁に青霊(せいれい)、肘前内側で上腕骨内側上顆前縁に少海(しょうかい)、尺側手根屈筋腱橈側縁で手首の上1寸5分・1寸・5分に、霊道(れいどう)・通里(つうり)・陰郄(いんげき)、手首に神門(しんもん)、こぶしを握って小指の頭が当たるところに少府(しょうふ)、小指の爪甲角近位外方1分に少衝

8)   小腸経19穴

 小指爪甲角近位内方1分に少沢(しょうたく)、第5中手指節関節尺側の遠位・近位に前谷(ぜんこく)・後渓(こうけい)、第5中手骨内側を撫で上げたくぼみに腕骨(わんこつ)、小指側手根部(三角骨)と尺骨茎状突起との間のくぼみに陽谷(ようこく)、前腕後内側で手首の上1寸・5寸に、養老(ようろう)・支正(しせい)、肘頭と上腕骨内側上顆の間の陥凹に小海(しょうかい)、腋窩横紋後端の上1寸に肩貞(けんてい)、同じく腋窩横紋後端の上方で、肩甲棘直下に臑兪(じゅゆ)、肩甲骨中央に天宗(てんそう)、肩甲棘中点上方に秉風(へいふう)、肩甲棘内端上方に曲垣(きょくえん)、第1胸椎棘突起下縁の高さで後正中線の外方3寸に肩外兪(けんがいゆ)、第7頸椎棘突起下縁の高さで後正中線の外方2寸に肩中兪(けんちゅうゆ)、甲状軟骨上縁の高さで胸鎖乳突筋の後縁に天窓(てんそう)、下顎角後方で胸鎖乳突筋との間に天容(てんよう)、目尻直下で胸骨下方の陥凹に顴髎(けんりょう)、耳珠(じしゅ=耳の穴の前の軟骨)と下顎骨の間の陥凹に聴宮(ちょうきゅう)。

9)   膀胱経67穴

@)首から上に10穴

目頭の内上1分に睛明(せいめい)、眉毛の内端に攅竹(さんちく)、前髪際の後方5分で前正中線の外方7分5厘・1寸5分に眉衝(びしょう)・曲差(きょくさ)、曲差の後方5分に五処(ごしょ)、五処の後方1寸5分・3寸・4寸5分に、承光(しょうこう)・通天(つうてん)・絡却(らっきゃく)、外後頭隆起上縁の高さで後正中線の外方1寸3分に玉枕(ぎょくちん)、第2頸椎棘突起上縁の高さで僧帽筋外縁の陥凹に天柱(てんちゅう)。

A)上背部・腰部・仙骨部で後正中線の外方1寸5分に20穴

 後正中線の外方1寸5分で、第1〜7胸椎棘突起下縁の高さに、大杼(だいじょ)・風門(ふうもん)・肺兪(はいゆ)・厥陰兪(けついんゆ)・心兪(しんゆ)・督兪(とくゆ)・膈兪(かくゆ)、同じく第9〜12胸椎棘突起下縁の高さに、肝兪(かんゆ)・胆兪(たんゆ)・脾兪(ひゆ)・胃兪(いゆ)、第15腰椎棘突起下縁の高さに、三焦兪(さんしょうゆ)・腎兪(じんゆ)・気海兪(きかいゆ)・大腸兪(だいちょうゆ)・関元兪(かんげんゆ)、第14後仙骨孔の高さに、小腸兪(しょうちょうゆ)・膀胱兪(ぼうこうゆ)・中膂兪(ちゅうりょゆ)・白環兪(はっかんゆ)。

B)仙骨孔・臀部〜膝窩まで10穴

 第1〜第4後仙骨孔が、上髎(じょうりょう)・次髎(じりょう)・中髎(ちゅうりょう)・下髎(げりょう)、尾骨下端外方5分に会陽(えよう)、殿溝中点に承扶(しょうふ)、承扶・委中の中点の上方1寸に殷門(いんもん)、大腿二頭筋腱内縁で膝窩横紋の上1寸・0寸に、浮郄(ふげき)・委陽(いよう)、膝窩横紋の中点に委中(いちゅう)。

C)上背部・腰臀部・仙骨部で後正中線の外方3寸に14穴

 後正中線の外方3寸で、第2〜第7胸椎棘突起下縁の高さに、附分(ふぶん)・魄戸(はっこ)・膏肓(こうこう)・神堂(しんどう)・譩譆(いき)・膈関(かくかん)、同じく第9〜12胸椎棘突起下縁及び第1・第2腰椎棘突起下縁に、魂門(こんもん)・陽綱(ようこう)・意舎(いしゃ)・胃倉(いそう)・肓門(こうもん)・志室(ししつ)。第2・第4後仙骨孔の高さで正中仙骨稜の外方3寸に、胞肓(ほうこう)・秩辺(ちっぺん)。

D)下腿〜足の第5指まで13穴

 膝窩中央〜外くるぶしを1尺6寸として委中の下方2寸・5寸・8寸に、合陽(ごうよう)・承筋(しょうきん)・承山(しょうざん)、腓腹筋外側頭下縁とアキレス腱との間で外果(=外くるぶし)の上7寸に飛揚(ひよう)、腓骨とアキレス腱の間で外果の上3寸に跗陽(ふよう)。外果尖(がいかせん=外くるぶしの最も高い処)とアキレス腱との間に崑崙(こんろん)。外果尖の後下方で踵骨隆起の前下方に僕参(ぼくしん)、外果下縁と踵骨の間の陥凹が申脈(しんみゃく)、第5中足骨粗面の後方・前縁にそれぞれ金門(きんもん)・京骨(けいこつ)、第5中足指節関節の近位・遠位に、束骨(そっこつ)・足通谷(あしつうこく)、足の第5指で爪甲角近位外方1分に至陰(しいん)。

10) 腎経27穴

@)下肢に10穴

 足裏の最もくぼむところに湧泉(ゆうせん)、舟状骨の尖ったところの直下に然谷(ねんこく)、内果尖とアキレス腱との間で後脛骨動脈拍動部に太渓(たいけい)、太渓の下方で踵骨上際に大鍾(だいしょう)、太渓の下方1寸に水泉(すいせん)、内果尖の下方1寸に照海(しょうかい)。なお、腎経の照海と膀胱経の申脈は「内外対応する経穴」である。アキレス腱前縁で内果尖の上方2寸に復溜(ふくりゅう)。復溜の前5分に交信(こうしん)、ヒラメ筋・アキレス腱間に築賓(ちくひん)、膝窩横紋(しつかおうもん=ひざうらのしわ)上で半腱様筋腱外縁に陰谷(いんこく)。大腿部に腎経のツボはないことに注意。

A)腹部に11穴

 前正中線の外方5分で、へその下5〜1寸に横骨(おうこつ)・大赫(だいかく)・気穴(きけつ)・四満(しまん)・中注(ちゅうちゅう)、へその高さに肓兪(こうゆ)、へそ上1寸はなく、へそ上2〜6寸に商曲(しょうきょく)・石関(せきかん)・陰都(いんと)・腹通谷(はらつうこく)・幽門(ゆうもん)。

へそ下5寸からへそ上6寸で、へそ上1寸だけ空いていることに注意。

B)胸部に6穴

 前正中線の外方2寸で、第5〜1肋間に歩廊(ほろう)・神封(しんぽう)・霊墟(れいきょ)・神蔵(しんぞう)・ケ中(いくちゅう)、同じく前正中線の外方2寸で鎖骨下縁に兪府(ゆふ)。胃経胸部、乳頭線(前正中線の外方4寸)上のツボで鎖骨下縁・第1〜5肋間の高さにある気戸・庫房・屋翳・膺窓・乳中・乳根と横並び(ただし流注の方向は逆)であることに注意。

11) 心包経9穴

 前正中線の外方5寸で第4肋間に天池(てんち)、上腕二頭筋両頭間で腋窩横紋前端の下方2寸に天泉(てんせん)、肘窩横紋上・上腕二頭筋内側陥凹で上腕動脈拍動部に曲沢(きょくたく)、長掌筋腱・橈側手根屈筋腱間で手首の上5寸・3寸・2寸・手首に、郄門(げきもん)・間使(かんし)・内関(ないかん)・大陵(だいりょう)、手を握ったとき掌に触れる、人差し指と中指(別説;中指と薬指)の間に労宮(ろうきゅう)、中指の先の中央(別説;中指の爪甲角近位外方1分)に中衝(ちゅしょう)。

12〉 三焦経23穴

 薬指爪甲角近位内方1分に関衝(かんしょう)、小指薬指間みずかきに液門(えきもん)、第4中手指節関節上内側陥凹部に中渚(ちゅうしょ)、手首背面中央に陽池(ようち)、橈骨尺骨間陽池の上2寸・3寸に、外関(がいかん)・支溝(しこう)、支溝の内方に会宗(えそう)、肘頭(=尺骨下端の出っ張り)と陽池を結ぶ線上で陽池の上4寸・肘頭の下5寸に、三陽絡(さんようらく)・四涜(しとく)、肘頭の上1寸・2寸・5寸に、天井(てんせい)・清冷淵(せいれいえん)・消濼(しょうれき)、肩峰角(=肩甲棘後縁から肩峰外側縁に移行する下方への出っ張り)の下方3寸で三角筋後縁に臑会(じゅえ)、腕を横に伸ばして肩峰の後ろの陥凹部に肩髎(けんりょう)、肩甲上角(=肩甲骨内上の角)上方に天髎(てんりょう)、下顎角の高さで胸鎖乳突筋後方に天牖(てんゆう)、耳垂(じすい=耳たぶの下部)後方に翳風(えいふう)、耳垂後方の翳風と耳の直上の角孫を結ぶ円弧の1/32/3の位置に瘈脈(けいみゃく)・顱息(ろそく)、耳を前方に折り曲げて耳のてっぺんが側頭に当たるところに角孫(かくそん)、耳珠(じしゅ=耳の穴の直前の小さな玉)前上方に耳門(じもん)、耳の付根前方、頬骨弓後端上方に和髎(わりょう)、眉毛の外端に糸竹空(しちくくう)。

13) 胆経44穴

@)首から上に20穴

 目尻の外方5分に瞳子髎(どうしりょう)、耳の穴の前下方で口を開くと深くくぼむところに聴会(ちょうえ)、頬骨弓中央上際に上関(じょうかん)、額の角から側頭の髪際に沿って耳尖(=耳のてっぺん)の高さまで下る曲線を4等分した1/42/43/44/4の位置に、頷厭(がんえん)・懸顱(けんろ)・懸釐(けんり)・曲鬢(きょくびん)、耳尖直上1寸5分に率谷(そっこく)、率谷の後ろ5分に天衝(てんしょう)、天衝と乳様突起(=耳の後ろの側頭骨下部の出っ張り)後下方陥凹を結ぶ曲線の上から1/32/33/3の位置に、浮白(ふはく)・頭竅陰(あたまきょういん)・完骨(かんこつ)、前正中線の外方3寸で前髪際の後ろ5分に本神(ほんじん)、瞳孔線上(=正視した瞳の中心を通る垂直線)で、眉の上1寸・前髪際後方5分・1寸5分・2寸5分・4寸に、陽白(ようはく)・頭臨泣(あたまりんきゅう)・目窓(もくそう)・正営(しょうえい)・承霊(しょうれい)、外後頭隆起上縁の高さで次の風池の直上に脳空(のうくう)、

後頭骨下方で胸鎖乳突筋と僧帽筋の起始部の間に風池(ふうち)。

A)胴体に10穴

 第7頸椎棘突起と肩峰外端を結ぶ中点に肩井(けんせい)、腋窩中央下方で第4肋間に淵腋(えんえき)、淵腋の前1寸に輒筋(ちょうきん)、乳頭線(女性では鎖骨中線)上で第7肋間に日月(じつげつ)、第12肋骨端下縁に京門(けいもん)、第11肋骨端下方でへその高さに帯脈(たいみゃく)、へそ下3寸の高さで上前腸骨棘(=骨盤上前部出っ張り)の内方に五枢(ごすう)、上前腸骨棘内下方5分に維道(いどう)、維道の外下方で上前腸骨棘と大転子頂点の中点に居髎(きょりょう)、大転子頂点から仙骨裂孔(別説;上前腸骨棘)へ1/3環跳(かんちょう)。

〈註:肩井は頸と胴体の境目に位置し、「境目は上に入れる(例;へそは上腹部)」との原則に基づくと厳密には「後頸部の経穴」となることに注意。また、環跳についても、「大転子頂点から仙骨裂孔へ1/3」の説をとると「臀部(すなわち胴体)の経穴」だが、「大転子頂点から上前腸骨棘へ1/3」の別説に従うと「大腿(すなわち下肢)の経穴」となる。〉

B)下肢に14穴

 直立して腕を垂らすとき中指頭のあたるところに風市(ふうし)、大転子から膝窩中央まで1尺9寸として、膝窩横紋の上方7寸で腸脛靭帯後方に中涜(ちゅうとく)、大腿骨外側上顆(=大腿骨最下部の出っ張り)後上縁に膝陽関(ひざようかん)、腓骨頭(=腓骨外上部の出っ張り)の前下部で長腓骨筋腱前縁に陽陵泉(ようりょうせん)、外果尖から膝窩横紋外端までを1尺6寸として、外果尖の上方で、腓骨の後方・前方に、陽交(ようこう)・外丘(がいきゅう)。

〈註:外果尖の上方7寸の陽の部位には、陽交の後方に膀胱経の飛揚、外丘の前方に胃経の下巨虚が位置する。足三陽の3経絡の穴が4個も横並びになる。〉

 腓骨の前縁で外果尖の上方5寸・4寸・3寸に、光明(こうめい)・陽輔(ようほ)・懸鍾(けんしょう)、外果尖の前下方に丘墟(きゅうきょ)、足背で第4・5中足骨間を撫で上げ指の止まるところに足臨泣(あしりんきゅう)、第4中足指節関節後外側陥凹に地五会(ちごえ)、足の第4・5指間みずかきで赤白肉際(せきはくにくさい=足の甲の皮膚と足裏の皮膚の境目)に侠渓(きょうけい)、足の第4指爪甲角近位外方1分に足竅陰(あしきょういん)。

14) 肝経14穴

 足母指、爪甲角の近位外方1分に大敦(だいとん)、足の第1・2指間みずかきの赤白肉際に行間(こうかん)、第1・2中足骨間を撫で上げて指の止まるところで足背動脈拍動部に太衝(たいしょう)、足首、内果尖前方で胃経の解渓と脾経の商丘との間に中封(ちゅうほう)、内果尖から膝蓋骨尖(膝の皿の最下部)までを1尺5寸として、脛骨内側面中央(=鍼を直刺すると骨に当たる)で内果尖の上方5寸・7寸に、蠡溝(れいこう)・中都(ちゅうと)、陰陵泉の後方1寸に膝関(しつかん)、膝窩横紋の内側端に曲泉(きょくせん)。

 膝蓋骨上縁から恥骨結合上縁までを1尺8寸として、薄筋・縫工筋の間で、膝蓋骨底(=膝の皿の最上部)の上方4寸に陰包(いんぽう)、胃経の気衝の下方3寸・2寸に、足五里(あしごり)・陰廉(いんれん)。足五里は大腿動脈拍動部にある。恥骨結合上縁の外方2寸5分に急脈(きゅうみゃく)、第11肋骨端下縁に章門(しょうもん)、前正中線の外方4寸で第6肋間に期門(きもん)。

3. 奇穴について

 正穴(せいけつ=十四径のいずれかに所属する正規の穴)361穴以外に、どの経絡にも属しないが、その有効性が経験的に証明されている穴を奇穴(きけつ)といい、臨床的にしばしば用いられます。代表的なものを主治症と共に、いくつか紹介します。

四神聡(ししんそう):督脈のツボ・百会の前後左右1寸の4穴セット。奇穴にはこのように複数の穴を一組にしたものがあります。頭痛、めまい、精神病に。

印堂(いんどう):眉間中央の陥凹部。小児のひきつけ、鼻疾患、不眠症に。

魚腰(ぎょよう):眉毛中央。眼疾患、眼瞼下垂に。

太陽(たいよう):眉毛の外端と目尻を結ぶ線の中央から後ろへ1寸。偏頭痛、眼疾患に。私が初めて人に鍼治療をするのを見たのはこのツボでした。近眼の患者さんの太陽に鍼を刺すと、たちまち視力がアップしたのには驚きました。

球後(きゅうご):眼窩下縁、目尻から目頭へ1/4。近視、視神経萎縮、視神経炎、眼瞼麻痺および痙攣に。これは細い鍼を眼球と眼窩の隙間に刺すのです。眼球を傷つけないように指で眼球を上に浮かせるようにして、なおかつ鍼尖(しんせん=鍼の先端)で眼窩下面を掻くようにします。難点は目の周りは静脈が多く、内出血を起こすとパンダのようになってしまうことです。リスクはあるのですが、効果も大きい奇穴です。

定喘(ていぜん):第7頸椎棘突起下縁で後正中線の外方5分(1寸との説も)。名前の通り、ぜんそくに効きます。別名を治喘(ちぜん)ともいいます。

腰眼(ようがん):第4腰椎棘突起下縁で後正中線の外方3寸5分。お尻の上部にまるで両目のようにくぼむのでこの名があります。腰痛や生殖器疾患に。

夾脊(きょうせき);第1胸椎〜第5腰椎の各棘突起下縁の高さで後正中線の外方5分に取ります。左右併せて34穴で一組の奇穴です。胸腹部の慢性疾患、特に肺結核に用います。「華佗夾脊(かだきょうせき)」の別名があります。

腰腿点(ようたいてん):第2・第3中手骨間、第4・第5中手骨間撫で上げて指の止まるところ(左右4点)。鍼の先が近づくように逆八の字に刺しつつ腰の運動をさせ、痛みの変化をみます。急性腰痛、捻挫、腱鞘炎、リウマチに。

落枕(らくちん):これは寝違えの特効穴です。第2・第3中手指節関節間の近位(=手首寄り)陥凹部。寝違えて痛みのある側の落枕をとり、鍼で刺激しながら首の運動をさせます。

八邪(はちじゃ):手を軽く握り、各中手指節関節間背側。左右計8穴。手の痛み、歯痛、頭痛に。

鶴頂(かくちょう):膝蓋骨底上際中央(膝の皿の上の真ん中)。膝を軽く曲げて取穴する。膝関節疾患、下肢の麻痺に。

闌尾(らんび):足三里の下約2寸。急性虫垂炎に。

八風(はっぷう):各中足指節関節間背側。左右計8穴。足の痛みに。

裏内庭(うらないてい):このツボの取り方は興味深いです。足の親指の隣の指の裏側の最も盛り上がったところに墨をつけます。そしてこの指を足裏側に折り曲げて墨の付いたところがこの奇穴です。胃経の内庭のちょうど裏あたり、というのでこの名があるようです。食中毒、食あたり、腹痛、嘔吐、下痢に。食中毒・食あたりのときは、このツボに灸をすえ続けます。初めは熱いのがよく分からないのですが、重ねて据えていくと「熱(あつ)っ!」と叫びます。すると食中毒・食あたりの原因となっている食べ物を吐き出すのだそうです。私自身はこのツボでの臨床経験はないのですが、機会があればぜひ試してみたいツボです。

失眠(しつみん):足の裏側、踵の中央で最も盛り上がったところ。不眠症に。この奇穴も食あたりの裏内庭同様、灸を次々とすえてゆき、「熱いっ!」と叫んだところでやめます。自分で施灸し易いツボなので、より深い睡眠を得たい方にお勧めします。

 

おわりに

 皆様方のなんらかの参考になることを願って、経絡経穴を一覧する小文をしたためました。14の経絡と361の経穴のすべてを概観しました。

 なにかある症状について、経絡という視点を持たれると、また新しい発見があるかもしれません。実例をあげてみましょう。涙腺が詰まる・背中が張る・膝の裏が痛い、といくつもの症状が並行して出ているとします。これはすべて足の太陽膀胱経の流注上の症状だな、と気づくと、症状を和らげる際のヒントになりませんでしょうか? また、風邪気味で、なおかつ親指の腱鞘炎をも発症している場合、それは手の太陰肺経の流注上の痛みであるから、まずは風邪をしっかり治すとよい、という判断ができるかもしれません。

 もうひとつ、皆様の中には既に経穴をマスターしておられる方で、すでに身につけておられる経穴の知識が、国際標準が定められる以前のものである場合、いったいどのツボにどのような部位の変更があったのかを、お確かめいただきたいと思い、簡略ながら、すべてのツボの部位をしたためた次第です。

 私自身、この小文を書き進める中で、パソコンにすべての経穴の単語登録をすることができました。今後の学習の上で、たいへんいい準備ができたと嬉しく思っております。また経絡・経穴とその背景を為す東洋医学の知識の整理もずいぶんすることができました。とりわけ、これまで本質をつかみ損ねていた心包と三焦について、思索を深めることができたのはありがたいことでした。電気エネルギーと体熱の産生と配分・調整こそは、中庸を理念とする漢方医学の、まさに中核をなす部分ではないでしょうか。            以上

[参考文献] 医道の日本社発行「新版 経絡経穴概論 第2版」

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