漢方つぼ物語(149)
通天(つうてん)

〈 PTAの想い出 その2 「おおきな木」 〉

 娘が三年間お世話になった桐蔭とも、お別れの日が近づいています。
 PTA会長としての私の仕事も、次の会長さん・役員さんたちにしっかりとバトンをお渡しすることを残すばかりです。
 一昨年の春に、無謀にもこの大役をお引き受けした日のことを、鮮明に思い出します。
 会長候補として氏名を読み上げられたときに、緊張で声が出なかったこと。その晩の懇親会で上座にぽつんと座っていた私の正面に、
 「私はここに座ろうかな。」
と小川校長先生が先生方の席から移ってこられたこと。
 この校長先生と力をあわせて、すばらしいPTAを作っていこう、と強く心に誓った瞬間でした。

***

 ところで皆さん、「おおきな木」というタイトルの童話をご存知でしょうか?
 この童話は、少年と大きなリンゴの木の物語です。少年はいつもリンゴの木に語っていました。ある日、少年はリンゴの木に、「お小遣いが欲しい」と頼んだのです。リンゴの木は「私の実を町へ持って行き、お金にかえればいい」と、少年に告げます。少年は、全ての実を取って町へ行ってしまったまま、しばらく戻っては来ませんでした。
 青年になって木のもとに戻って、「家が欲しい」と言います。大人になってからは「旅がしたいので船が欲しい」と。
 これらすべての願いに、リンゴの木はことごとく応え続けて、とうとう切り株だけになってしまいました。家も建て旅もし終え、すっかり年老いた男は、久し振りに、リンゴの木の切り株のもとへ帰ってきたのです。
 今度はリンゴの木から声をかけます。
 「すまないね、もうおまえにあげられる物はなにもないのだよ。」
すると年老いたこの男は、
 「もう何も欲しくない、それより疲れた、休みたい。」
 ―この言葉をきいてリンゴの木は嬉しそうに言います。
 「それなら、私の切り株に腰掛けて休むといいよ!」
 老人はゆっくり腰掛けて、しばしまどろむのでした。

***

 ひたすら与え続けるリンゴの木と、貪欲に望みを叶えてゆく若者との寓話は、そのまま親子の姿と重なります。私たちの子どもたちは私たちのすねをかじり続けて、やがて私たちのもとを去ってゆきます。そして、いつか人生に疲れて私たちのもとを訪れたとき、疲れた子どもたちを憩わせてやるだけの余力は、残しておこうではありませんか。
 そう、たとえ「切り株だけ」の姿になってしまっていたとしても。

***

 PTA活動へのご協力に、心より御礼を申し上げます。
   桐蔭中学校・高等学校PTA会長・体育文化振興会会長 宮本年起

〔通天(つうてん)〕目頭から頭を巡り背中を下り足の小指に至る膀胱経第7穴。
取穴:頭頂の百会のツボの、外側1寸5分・前方1寸(前髪際の後方4寸)。
治効:頭部の血行を促し老化予防の効果あり。若々しい親であるためのツボ。

《作者から一言》この文章はPTA広報誌に掲載された会長退任の挨拶。会長としてのほぼ最後の仕事は、新入生へのお祝いの挨拶でした。入学式は総会より前にあるので。平成21年4月に桐蔭高校に入学した生徒たちが今、大学入試に挑戦しています。入試に向けてこどもたちがラストスパートをかけている昨年11月、保護者と先生方の懇親会に闖入した私は、「松竹梅3枚さらまわし」という芸を披露しました。首尾良く緑・若竹色・ピンクの3枚の皿を回した後、「待つ(松)こと久しい入学試験、ありったけ(竹)の実力発揮して、うめえ(梅)こと行きますよう、祈っております!」と口上を述べました。私が会長として最後に迎えた桐蔭生たちへの精一杯の“アフター・サービス”のつもりでした。桐蔭を巣立っていく子供達のみならず、未来を担う若者達の輝かしい歩みを祈らずにはおれません。(宮本)



上は通天の図

 ●この文書は、当会会員である、宮本年起氏の創作です。

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