漢方つぼ物語(152)
印堂(いんどう)

〈 人形小学校 〉

術者は太郎の母親役。スカートに割烹着、ヘアピースを付けドーラン化粧。人形の太郎を抱いて登場。
母親:皆さん、こんにちは!
太郎:♪春が来た 春が来た どこに来た 鼻に来た 喉に来た 目にも来た ハックショーン!
母親:太郎ちゃん、舞台に出てきた早々、その歌はいったい何よ!?
太郎:花粉症の歌!
母親:あらまあ、それなら花粉症に効くおまじないを教えてあげる。眉と眉の間に指を強く押し当てて、ぐるぐるぐると回してごらん。ほら、目も鼻もスッキリしたでしょ。
太郎:ほんまや。
母親:ところで太郎はこの春、小学校に入学したのよね。
太郎:そう、人形小学校。こないだひいおじいちゃんに「人形小学校に入った」って言ったら「わしと同じやな」って。ひいじいちゃんは人形か?
母親:ちがう、ちがう。ひいじいちゃんが通うたんは尋常小学校。太郎は人形小学校。聞き間違えてるんやがな。
太郎:なんや、そうかいな。
母親:学校でみんな仲良うやってるか?
太郎:イジメがあるんよ。
母親:そら、いかん。太郎がいじめられてんのか?
太郎:ううん、いじめてる。
母親:なんてことするの。
太郎:でも、生意気なヤツがおるんや。
母親:みんな同じ人形同士やろ。
太郎:それがな、元人形で今人間の子どもっちゅうのが一人おるんや。
母親:それはだれ?
太郎:ピノキオやがな。
母親:なるほど、賢こうしててホンマの子どもにしてもろうたんや。
太郎:エエ子ぶって小憎らしからどついたった。
母親:太郎、あんたまるっきしイジメっ子やがな。カッとなってどついても、そのあと、ちゃんいうことあるやろ。
太郎:言うた、言うた。「今日はこれくらいにしといたるわ。」
母親:まるでヤクザやな。そうやなくて「ごめんなさい」やろ。
太郎:それはいわなんだな。そやけど人形小学校にもいろんな子がおるで。
母親:へえ、たとえば?
太郎:いつも二人一緒に登校して、二人で座って、二人で帰るのがおる。
母親:仲ええんやな、それ、だれ?
太郎:男雛君と女雛さんや。
母親:それはしょうないな。
太郎:まさかりかついで来るのが金太郎や。かけっこで遅いのが五月人形。
母親:ヨロイを着込んでるから、ビリでもしようないわな。
太郎:いや、ビリはわら人形。お母ちゃん、なぜかわかるか?
母親:わらでできてたら、身軽なはずやのにな。
太郎:わら人形は「のろい」!
母親:しゃれかいな。ほかには?
太郎:スタイルのいいのはリカちゃん人形、それから足が魚で腰から上が女の子、ちゅうかわりもんがおるで。
母親:それは人形やなくて、「人魚」やろ?
太郎:なんか手続きの間違いで入学してきたみたいや。
母親:先生はどんな先生がおるの?
太郎:人形の学校は鳥やお魚が先生してる。厳しい先生と優しい先生がおる。
母親:優しい先生は?
太郎:メダカの先生や。友だちみたいに優しい。
母親:歌にある通りやなあ、「だれが生徒か先生か だれが生徒か先生か」。
太郎:厳しいのはスズメの先生。
母親:「むちをふりふりチイパッパ チイチイパッパ チイパッパ」。
太郎:その通りや。まあ、先生もいろいろやなあ。
母親:それはええけど、学校の行き帰り、ひとに親切にしてるか?
太郎:それは心配ない。だれにも親切にしてるで。
母親:ほんまかいな。
太郎:このあいだ、お年寄りが大きな荷物を持って、杖ついて、家を探して歩いてたんや。
母親:親切にする絶好のチャンスや。
太郎:まずは「だれのおうちをおさがしですか?」ってたずねた。
母親:うん、うん、感心、感心。
太郎:そしたら「人形小学校に用があるんです」って。
母親:ちょうどよかったな。
太郎:「案内します」ってゆうて…
母親:ええがな、ええがな。
太郎:「その荷物もお持ちします!」
母親:賢なったなあ、太郎。母ちゃん、うれしいがな。
太郎:まだあるんよ。
母親:えっ、まだあるの?
太郎:杖ももってあげます、って
杖をとりあげたら、お年寄りがすってんころりん、ひっくり返ってしもた!
母親:ええかげんにしなさい!

〔印堂(いんどう)〕正規のツボではないが特定の症状によく効く奇穴の1つ。
取穴:顔の中心線で眉間(みけん)、つまり左右の眉と眉の中間あたりにある。
治効:小児のひきつけに効くツボであるが、花粉症の目や鼻の炎症も和らげる。

《作者から一言》平成24年2月に田辺市(旧大塔村)鮎川小学校、3月に紀美野町(旧野上町)小川小学校で相次いで公演をさせて頂いた。そのとき、こどもたちに大受けしたのがこの腹話術ネタ。忘れがたい想い出だ。(宮本)



上は印堂の図/太郎とお母さん

 ●この文書は、当会会員である、宮本年起氏の創作です。

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