漢方つぼ物語(162)
大赫(だいかく)

〈 還暦記念落語 還暦祝の赤揃え 〉

 漢方亭浪漫の落語でしばしお楽しみ頂きます。わたし、このたび還暦を迎えまして、いろいろとご祝儀を頂きました。まずは患者さんのお一人から真っ赤なポロシャツを頂戴致しました。ペンギンさんのマークが入ったブランドものでございます。さらに、こどもが幼稚園に通っておりますときに、保護者会をご一緒いたしましたお仲間と今でも仲良くして頂いておりまして、7名様連名でなんともすばらしい贈り物を頂いたのでございます。大丸百貨店特製の名入り赤座布団でございます。わたしどもハナシカは、大喜利でいい答えを出しますと「座布団一枚!」とお声がかかるのでございますが、このたびはなんと、本物の「座布団一枚」を賜ったわけでございまして、嬉しいやら勿体ないやら。
 そんなわけで、ペンギンの赤いポロシャツを着て、漢方亭の名入り座布団に座って、還暦をテーマにした新作落語でご機嫌をお伺いする次第でございます。

 ***

「和尚さん、お盆のお参りにお越し頂いたついでに、こんな相談を持ちかけて申し訳ないんでございますけど…」
「ほうほう、遠慮は要りませんで。お帰りになってるご先祖さんもええお知恵を貸して頂けるや知れまへん。なんでも包み隠しのう言いなはらんかいな。」
「恥ずかしながら、うちの主人、もう還暦を迎えますのに、飲む・打つ・買うの道楽がいっこうに止みません。なんとかなりませんやろか?」
「飲む・打つ・買う、といいますと酒に博打に女遊びということですかいな?」
「飲むのは毎晩のように一升酒、博打はパチンコ・麻雀・競輪・競馬は言うに及ばず、花札にまで手を出します。女遊びは二股・三股…」
「それやとお仕事はおろそかになりますなあ。」
「いえ、それがね、根が丈夫なお人でっさかいに、仕事は仕事でよう働いて、しこたま儲けてくれます。ただ、儲けたお金は道楽に使い果たしてしまいます。」
「なんとエネルギッシュなお方ですなあ。分かりました。ご主人、還暦やとおっしゃったな、それは好都合や。還暦の祝いに赤いお召し物をプレゼントするやおまへんか。赤い色は信号の赤信号と同じで、悪さを止める働きがありますのや。女遊びは下半身やから赤いズボンで、賭け事は赤い上着で、大酒飲むのは首から上やから赤い帽子で止めさせようやないか。お寺でしっかり祈願した、赤い帽子・上着・ズボンを、ご主人さんに身につけさせなはれ。」

 ***

「あなた、還暦おめでとうさん。これ、私とこどもたちからのお祝いです。」
「おう、なんや。これは赤揃えの一式やないかい。昔から赤い色のものを身につけると血行がようなって、からだにええというがな。おおきに、おおきに。さっそくこれ着て、現場へ行こう。」
 奥さんの思いと和尚さんの祈りが通じたのか、不思議なことに赤揃えを身につけたその日から、旦那の道楽はすっかり止んでしまいました。浮気相手とはきれいさっぱり縁を切って、博打は足を洗い、そして酒はと申しますと、ほんのたしなむ程度の、ええお酒を楽しむようになりました。
「和尚さん、先日は相談に乗って頂いてほんまに助かりました。」
「というと、ご主人の道楽がマシになったのやな?」
「マシどころか、きれいさっぱり、聖人のようになってくれました!」
「それはよかった。しかしそれやと、ご主人は働くばっかりで、お金が貯まり放題やなあ。」
「いえ、それはちがいますのよ。道楽を止めた途端、主人はテレビのニュースや新聞の記事を熱心に見るようになって、『世界には戦争で三度の食事もできん子供もおおぜいいるんやなあ、気の毒なこっちゃ。わしらの余ったお金は全部、世界中の恵まれん子供達にさしあげようやないか』と、こう申しまして、儲けたお金をほとんど、ユニセフを通じて寄附なさるんです。」
「なんと見上げたもんや。人間、そこまでいっぺんに変われるもんかいな!」
「私もなんで急にこんな聖人になったんやろか、と考えて、はたと気がつきました。」
「ほう、それは一体、なんでですのや?」
「赤い服に赤いズボン着て、それに赤い帽子をかぶった途端に、きっとうちの主人、サンタクロースになりはったんですわ。」
 おあとの用意がよろしいようでございます。

〔大赫(だいかく)〕腎経は生命力の源、冷えと老化予防の経絡。腎経第12穴
取穴:臍〜恥骨を5寸として臍下4寸、正中線の外方5分(親指の横幅の半分)。
治効:男性にあっては疲労による精力減退、女性にあっては婦人病全般に効く。

《作者から一言》立派な座布団を賜ったことを好機として、漢方落語による人類の健康・幸福のために、よりいっそうの精進いたす覚悟です! なお、インターネット上の動画サイト「ユーチューブ」で私の“実演”をご覧頂けます。(宮本) [実演はこちら]



上は大赫の図/還暦祝の名入り座布団

 ●この文書は、当会会員である、宮本年起氏の創作です。

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