漢方つぼ物語(173)
魚 際(ぎょさい)

〈 四国講演旅行 その2 「徳島で経穴講義3時間」 〉〉

  平成25年1月26日土曜日、午前4時起床。朝食をとり、裏起毛のズボン下に身を包み和歌山港フェリー乗り場で切符を買う。5時35分発のフェリーは予定通りの7時35分に徳島港に到着。この日のために購入したカーナビに導かれて、まずは最初の講演地である香川県さぬき市の辛立(からたち)文化センターに向かう。午前9時過ぎ、無事に目的地到着。午前10時人権啓発の催し「冬のつどい」開会。地元の女子中学生による箏の演奏、子供たちの劇団による歌とダンスを経て午前10時40分、いよいよ私の出番がやってきた。司会役のこどもが私を紹介してくれた。およそ90分のステージ「講演と人権マジック&腹話術」をいっぱいの拍手を頂いてつとめることができた。引き続いての幼稚園・保育園児、小・中学生の発表を客席で拝見し、中庭の模擬店でお母さん方手作りのさぬきうどんで温まって午後2時ごろ、会場を後にした。

     *** 

  その後、向かったのは徳島文理大学。翌27日の「経穴学講義」の依頼主、同大薬学部の庄子 昇教授の研究室を表敬訪問。応接間と実験室、ゼミ室に書斎まで兼ねているような大きな部屋。漢方生薬の標本が並ぶ。くつろいだ会話を交わしているとたちまち2時間ばかりの時間が過ぎていた。いったん失礼して庄子先生に予約頂いている今宵の宿、JR徳島駅ビルのホテルクレメンテ徳島にチェックイン、ゆっくりと入浴する。午後6時過ぎ、先生の奥様運転の自家用車でお迎え頂き、徳島の老舗の料亭「笹乃庄」にて豪華な和食フルコースをご馳走になった。これで明日の講義への意欲は最高潮に達する。やるっきゃない!

     ***

  「徳島和漢薬研究会の皆様、初めまして。鍼灸マッサージ師の宮本敏企でございます。昨年のゴールデンウィークに和歌山にお越しになった庄子会長様がホテル東急イン和歌山に泊まられて、マッサージをご依頼頂きました。それを機に親しくして頂き、今日、漢方薬の専門家であられる皆様に経穴学のお話をさせて頂くという光栄に浴しております。大学教授と宿泊マッサージ師との出会いが生み出したこの幸運に感謝申し上げます。私は和歌山県立盲学校で経営学と併せて、漢方のツボ・経穴の授業を担当して満10年となります。10年間の集大成のつもりでこれより約3時間、経穴のお話をさせていただきます。」

     ***

  「私が東洋医学の専門学校の門をくぐったのは36年前のことです。入学した年に、たわむれに作った都々逸をご披露いたします。タイトルは『一週間』。まずは月曜日。“男の身ながら月曜ごとに 生理が始まる午後1時” 学校の授業は午後1時開始で、月曜日の1時限が生理学であったというわけです。火曜日は衛生学。“衛生学のノートを抜け出 カタカナコレラが大暴れ” 昭和52年春、和歌山県有田市において当時、法定伝染病であったコレラが発生しました。衛生学の先生が、それら・これらのこれらと区別するため、病気のコレラをカタカナコレラ、と言っていたのを茶化したのです。水曜日は按摩実技。“おしてなでるが按摩の極意 ひたすら押すのが恋の道” 木曜日は鍼灸実技。“痛くはないかと気遣いながら 深く差し込む銀のはり” これ、一番都々逸っぽいと自分では気に入っています。現在、臨床では使い捨てのステンレス針をつかっておりますが、学校ではやわらかい銀針を用いたものです。金曜日は経穴学。“はりも刺さなきゃお灸もすえぬ なぜに乳中(にゅちゅう)ツボのうち” ツボの中には禁鍼(きんしん)・禁灸穴といって、はりも灸もしてはいけないツボがございます。乳中は乳頭、すなわち乳首のてっぺんのツボで、まさに禁鍼・禁灸穴なのです。ラストは土曜日、解剖実習。毎週土曜日に解剖実習があったわけではありませんが、和歌山県医大と大阪大学医学部で解剖を見学させて頂く機会が与えられました。普通の見学と異なるのは、ご遺体を自由に触れさせていただけたことです。鍼灸マッサージは手でする仕事ですから、スポンジのような肺、ゴムのような胃腸などをじかに触って、その感触を記憶せよ、と言われました。都々逸は“解剖実習に励んでみても 気血の流れは見えぬらし” いかに目を凝らしても、気血の流れる道筋である経絡(けいらく)は、ついぞ目で確認することはできなかったのです。解剖的に検証することのできない経絡。その要所がツボ=経穴で、からだの反応点・診断点であり、なおかつ治療点なのです。」

     ***

  世界保健機構(WHO)の働きかけで数年前に日中韓三か国で経穴部位が統一され世界標準となり学校現場の教科書もそれに基づいて改訂されたこと、経穴の位置を示す寸度(○尺□寸△分)は、曲尺(かねじゃく)でも鯨尺でもなく、一人ひとりの身の丈に比例した「相対的な長さ」であること、経穴は手足12経絡と体の正中線を通る督脈・任脈の計14経のいずれかに所属することなどを説明し主なツボを解説していると、3時間はあっという間に過ぎたのだった。

〔魚際(ぎょさい)〕手足の12経絡の出発点である肺経11穴中の第10穴。
取穴:親指付け根に連なる骨の真ん中で、掌の皮膚と手の甲の皮膚の境目。
治効:空咳や声枯れに。講演を前にのどを調えるツボ。リラックス効果も。
《作者から一言》これを機に、経穴の本を執筆しようと強く決心した。(宮本)



上は魚際の図

 ●この文書は、当会会員である、宮本年起氏の創作です。

[前のページへ] [次のページへ] [メニューへ戻る]
[トップへ戻る]


社団法人 和歌山県鍼灸マッサージ師会
 〒640-8341  和歌山市黒田97−14
 電話  073-475-7771  FAX   073-474-2241

 メールはこちらまで  info@washinshi.com