漢方つぼ物語(174)
腰兪(ようゆ)

〈 あなたの健康を守るツボのお話 〉

 皆様、こんにちは。思いのほか寒さの厳しかった冬も、一昨日吹き荒れた春一番で吹っ飛んで、ようやく春がすぐそこまで近づいている気配です。本日は私ども一般社団法人和歌山県鍼灸マッサージ師会主催の第12回健康セミナーに、ようこそご来場いただきました。今回のテーマは「ツボ」。はり灸マッサージの治療になくてはならない「ツボ」に、スポットライトをあててみます。題して「あなたの健康を守るツボのお話」です。

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 まずは「ツボって、いったい何?」というところからお話を始めましょう。東洋医学では「人間は小宇宙である」と考えます。宇宙・天体を動かしているエネルギーと人間の生命活動をつかさどっているエネルギーとは同じものだ、という考え方です。とてもスケールの大きい考え方だと思います。さらに、私たちのからだを動かすエネルギーを、「気血(きけつ)」と呼びます。「気」は目に見えないエネルギーとされますから、神経の中を流れている電気信号に近いイメージです。「血(けつ)」は液体のエネルギーで、血液やリンパに近いものと考えられます。でも神経の中を通る電気が「気」で、血液・リンパがイコール「血」であるというわけではありません。なぜかと申しますと、気血の通り道として、「経絡(けいらく)」というものが想定されているからです。
 経絡には、平常時に流れる手足の12の経絡と、気血の流れがあふれたときにできる特別の道としての8つの奇経(きけい)があります。奇経の中でも、からだの前後の中心線(これを「正中線=せいちゅうせん」と呼びます)を通る2つ、後ろの督脈(とくみゃく)と前の任脈(にんみゃく)が特に重要です。
 もし、神経を流れる電気=気、血管を流れる血液=血(けつ)であるなら、神経や血管が経絡とピタリ一致するはずですが必ずしもそうではありません。
 では経絡がどのように流れているのかを見てみましょう。
 手足12の経絡は、腕の付け根から腕の内側を指先へ、指先で反転して腕の外側を肩へ、頸・頭・顔をへて体の外側を足の先へ、さらに足の先で反転して足の内側を上り、胸腹を経て腕の付け根に戻る、という経路を、前・後ろ・真ん中の3回繰り返しながら巡っています。また督脈・任脈はからだの正中線上を巡っています。これらの流れは、東洋医学が独自に想定するものといえます。

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 ここまでが「ツボとはいったい何か?」という説明に必要な長い前置きです。たいへんお待たせいたしました。いよいよツボの正体を明かしましょう。ツボは「手足12経絡と督脈・任脈の流れの要所」として存在します。はい、結論です。「生命エネルギーが流れる道筋の要所」、それがすなわちツボなのです。
 それでは次に湧き起こる疑問があります。ツボにはどんな意味、どんな働きがあるのでしょう? ツボの意義と効用を探ってみましょう。
 ツボには大きく分けて3つの意味・効用があると考えます。順に説明します。
 ツボはからだに異常があるときに、その反応が出る場所です。気血が滞っているとき・かたよっているとき、また経絡に邪気がたまっているとき・経絡のエネルギーが不足しているとき、ツボに反応が出ます。
 ツボはからだの異常を判断する場所でもあります。ツボの状態(痛み、しびれ、しこり等)でからだの異常がわかります。
 さらにツボは、はりを刺し、灸をすえ、マッサージ・指圧を施す場所です。気血を調え、からだのバランスをとるために、ツボに治療を施します。
 すなわちツボは、からだの異常の反応点であり、東洋医学的診断点であり、また、はり灸マッサージの治療点です。
 ツボには、通常、2文字もしくは3文字の漢字の名前がついています。ツボに、どんな漢字が多く用いられているか調べてみました。
 最も多く用いられているのは「兪(ゆ)」、という漢字で。これは輸(はこ)び癒(いや)す意味です。次いで「門」。出入り口を調節する意味。3番目は「中」。中庸(ちゅうよう)、即ち過不足なくバランスのいい状態を意味します。
 また、「ツボの数は365で一年の日数と同じ」だと二千年前の本に書かれています。ツボの数が365、手足の経絡の数が12。一年の日数とツボの数が一致し、月の数と手足の経絡の数が一致するのは、はたして偶然でしょうか? 
 最初に人間は小宇宙と申しました。これらの数字の一致は、それを象徴していると思われます。一人ひとりの人間が宇宙の縮図であるなら自分だけが健康になるというわけにはまいりません。まずは私たちが住む地球という星の環境を調え、お互いの関係の調和を保たなければなりません。東洋医学は、私たちの生命の本質を端的に示すとともに、人間のあるべき姿を示しているようです。
〈平成25年3月3日 第12回 健康セミナーより〉

〔腰兪(ようゆ)〕「兪」の字を穴名に含む24の正穴中で最も早く学ぶツボ。
取穴:尾骨のすぐ上、仙骨中央下のえぐれたところ(=仙骨裂孔)に取る。
 治効:足腰の痛み・しびれに効くほか痔や月経痛・更年期障害にも用いる。

《作者から一言》マスコミに告知して頂いたお陰で盛況でした。講演後、希望される方に会員有志が、はり灸マッサージの体験治療を施しました。(宮本)



上は腰兪の図/体験コーナーの写真

 ●この文書は、当会会員である、宮本年起氏の創作です。

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