漢方つぼ物語(178)
曲泉(きょくせん)

〈 花まつり 〉

 みなさん、一緒に絵本を読みましょう! すっかり春らしくなった今の季節にぴったりの絵本、「はらぺこ あおむし」だよ。(中くらいの大きさの絵本を出す)でもこれじゃみんなで読むには小さいね。大きくしよう。「大きくなあれ」って言ってね。(子供達「大きくなあれ」)あれえ! (小さい絵本を出して)こんなに小さくなっちゃった。もっと大きな声で。「大きくなあれ!」(ジャンボ絵本を取り出して)わあ、こんなにでっかくなった。(マジックの手法で絵本から卵や青虫を取り出しつつ)はっぱをいっぱい食べた青虫はさなぎから蝶になって、春のお空に飛んでゆきました。エリック・カール「はらぺこ あおむし」でした。
 ところで、何一つ不自由のない家に生まれて、まるで蝶のように美しく着飾って、おいしいものを食べて、なんでも思い通りにしてくれる多くの家来に囲まれていたのに、その家を飛び出して、まるで青虫みたいに山や野原をさまよう年月を過ごされた方がおられます。その方の名を、ゴータマ・シッダルタとおっしゃいます。そう、お釈迦様のことです。
 それは今からおよそ2千5百年前のことです。今の地図で言うと、インドとネパールという国との国境のあたりにお城をかまえる王様がいました。お妃さまが赤ちゃんを産むためにご自分の家に帰る途中、花園でお休みになりました。そこでお釈迦様は生まれたのです。その日が4月8日でした。今日は何日?  そう、4月8日。お釈迦様のお誕生日です。お釈迦様がお生まれになったとき、お空からたくさんの花びらと、甘い露がおりてきたといいます。お釈迦様の像に甘茶をかけるのは、それにちなんでいます。お釈迦様は生まれたとたんに、7歩あゆまれて、右手で天を、左手で地を指さして、「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげ・ゆいがどくそん)」って言ったそうです。たった一つのこの命が何よりも尊い、という意味です。お気の毒なのはお釈迦様が生まれた一週間後に、お母様のマヤ様がご病気で亡くなられたことです。お母様の妹にあたる方が新しいお母さんとして優しく育ててくれました。その後、お釈迦様は結婚して男の子が生まれました。そして29歳になったある日、お釈迦様はお城を出ました。山や野原をさまよう苦しい修行を6年間も続けました。でも大切なのは、そのような身を痛める修行ではない、と気づきました。そこで、お釈迦様は菩提樹という木の下で、さなぎのようにじっと動かずに物事を深く考え、悪魔の誘惑をすべてはねのけ、ついに魂まで蝶のように美しく輝きわたりました。

***

 ○:今日は生まれたばかりのお釈迦様に来ていただいています。(赤ちゃんの人形を出す。人形、天と地を指さして)「てんじょうてんげ・ゆいがどくそん!」
 さあここで、みんなのお友だち・人形ふうちゃんの登場でーす!
 △:みなさん、こんにちは。ふうちゃんだよ。
 ○:ふうちゃんはふだんなにしてるの?
 △:人形小学校へ行ってるよ。リカちゃん人形と同じクラスよ。
 ○:そう、リカちゃんとなかよくしてる?
 △:ケンカしてる!
 ○:ええー! なかよくしないとダメでしょ。
 △:リカちゃんは生意気やから、このあいだどついてやった。
 ○:なんてことするの! でもそのあと、ちゃんということあるでしょ。
 △:いうた、いうた。「今日はこれくらいにしといたるわ」って。
 ○:そんなんあかん。ごめんなさい、でしょ。おやまらなきゃいけないでしょ。
 △:そうか、それは気が付かんかった。
 ○:お釈迦様はみんなが仲良くするように教えて下さっています。さあ、ではみんなが仲良くするためには、どうしたらいいかな?
 (最前列で熱心に聞いてくれていた少女が、即座に)「ありがとう、って言う!」
 ○:いいこたえをもらいました。そうだね、ありがとう、っていう気持ちを、いつも持っていたら、ケンカなんかしないですむよね。」

***

 花まつりの腹話術を終えた後、お茶を頂きながら老僧とお話を交わす中で、さきほどの少女の見事な受け答えに話が及んだ。老僧は言った。
 「あの子は、この寺のすぐ近くの児童養護施設のこどもさんなのですよ。」
 様々な事情で親と一緒に生活できない子供たちが暮らす児童養護施設。笑顔いっぱいで「ありがとう、って言う!」とこたえた少女の姿が、もう一度よみがえって私の脳裏に深く焼きついた。
〈平成25年4月8日 和歌山市直川 浄土真宗 浄永寺 花まつりにて〉

〔曲泉(きょくせん)〕手足12経絡をしめくくる調整力の強い肝経の第8穴。
取穴:膝を曲げた姿勢で、膝の後ろのしわの内側端にある腱の内側のくぼみ。
治効:血液不足を補い、産後の肥立ちをよくする。肝経の機能を高めるツボ。

《作者からの一言》お釈迦様の苦悩は生みの母を喪ったことと関わっていると思う。インドでは今も貧血のために出産時や産後、亡くなる女性が多いそうだ。
仏教が魂の救いをもたらしたように、東洋医学も体の救いとなりたいと思う。



上は曲泉の図

 ●この文書は、当会会員である、宮本年起氏の創作です。

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