漢方つぼ物語(185)
いき

〈 “きぼう”プロジェクト 〉

 平成25年3月11日に東日本を襲ったマグニチュード9.0の大地震は、関東・東北に甚大な被害をもたらした。福島県においてはその地震がもたらした津波によって電源を断たれた原子力発電所が深刻な放射能漏れを引き起こし、2年以上を経た今もなお、我が家に帰れない人々もいる。
 福島県の子どもたちを和歌山に招待し、南国の日差しの中で過ごしてもらおうという「集団宿泊活動“きぼう”プロジェクト25 のびのび和歌山体験」、その二日目の歓迎レセプション・お楽しみタイムに出演させて頂いた。
 まずは、わかやま楽落(らくらく)会メンバーによる子ども落語4席。このほど宮崎県日向市で催された「こども落語全国大会」で審査員特別賞を受賞したばかりの小学校1年生、ぴょんぴょん亭うさぎさんをはじめ4人の落語に、福島からの小学5・6年生35人は笑ったり感心したり。

     ***

 そして私の出番。2年前にも出演させて頂いたのだが、
 「和歌山で有名な腹話術とマジックの宮本さん!」
 と進行役の先生が紹介してくださったとき、
 「眠くてたまらないので、部屋に帰ってもいいですか?」
 と尋ねる子供がいて、出鼻をくじかれた。今年も「部屋に帰らせて」と願い出るこどもがいるかも、と覚悟していたら、どっこい今年は大違い。
 「腹話術とマジックを見せて頂きます!」
 との紹介を耳にして間髪を置かず、
 「えっ!ほんと?」「ラッキー!」「早く見たい!」
 この落差はなんなのだと考えて、すぐわかった。2年前の7月といえば原発事故のわずか数か月後、大人同様、子どもたちも疲労困憊していたに違いない。2年の年月を経て、ようやくこどもたちも落ち着きを取り戻しつつあるのだろう。

     ***

 「和歌山のいっこく堂、はたまた和歌山のMr.マリック、宮本年起です! 今、落語をきかせてくれた4人の子どもたちの歳を全部あわせたよりも、まだ年をとっています。年では勝っていますが、中身でも負けないように頑張ります!」
 拍手喝采。和歌山名物の梅干し・みかん・海と空をあらわす赤・黄・青の3枚皿回し、大成功、元気な男の子、可愛い女の子、とびっきりかわいい赤ちゃん、特別出演のお母さん(実はスカートはいてヘアピースをつけた私)、貴志川線“たま駅長”の友達・猫のクロと次々に人形を出してゆき、2年後の紀の国わかやま国体・障害者スポーツの紀の国わかやま大会PRのマスコットである紀州犬の“きいちゃん”のぬいぐるみを用いて国体のスローガンをPR。
 紙コップを用いた一続きのマジック。3個の紙コップ、一つだけボールが入っている。ではコップを入れ替えます。さあ、ボールはどこ? 何回やっても当らない。ここで白いコップを透明のコップに変えての種明かし。なんとボールは3つのコップのすべてに入っていた。紙コップの口径より直径がわずかに小さいボールをコップと一緒に持ち上げれば「空っぽ」、紙コップだけを持ち上げれば「入っている」。インチキだって? インチキではなく、トリックです。
これでもちょうど良い大きさのボールを探すのにずいぶん苦労したんですから。次に2個の紙コップの中がカラなのを改めて、両方に水を注ぎます。一方を飲み干します。こうやってコップを大きく傾けてごくり。こっちはカラ、こっちは入ってる。水飲みたい人? はいどうぞ(とコップの水をぶちまける)。あらいつの間に蒸発したんだろ? 飲み干したはずのこっちのコップからは…わあ、こんなに水がでてきた! え? 種明かし? これは自分で推理してください。
 では本日のマジックショーのメインイベント。メンタルマジックのダイゴに3日間弟子入りして、習ってきました。ずらりとならんだ紙コップの中に水の入った小さな紙コップを隠してください。私はあっちを向いておきます。一つずつ、「ここですか?」と尋ねますから全部に「違います」と答えて下さい。
わずかの表情の違いでどこに隠したか当てますよ。はい、百発百中、大当たり!

     ***

 子どもたちは3泊4日のスケジュールを楽しんだ後、8月2日に帰っていった。後日、担当の先生からプロジェクト協力へのお礼と報告のメールが届いた。  「帰りのバスのお見送りに行ったら、何人か涙ぐんでる子ども達がいました。今までは無かったこと。少しはゆとり出て来たのでしょうか。今年からは学校のプールも始まったそうです。でも、放射能を心配して親が許さない子どももあるそうです。まだまだ、通常の教育とはいかないようです。」

〔いき〕目・頭から出て足の先へと向かう足の太陽膀胱経第45穴。
取穴:第6・第7胸椎棘突起間で背中の中心線(=後正中線)の外方3寸。
 治効:こりや痛み、たまっているストレスをゲップや吐息で吐き出すツボ。

《作者からの一言》福島の子どもたちが何の憂いもなく伸び伸びと過ごせる日が一日も早く来ますように! 希望と幸せがいっぱいありますように!(宮本)



上はいきの図

 ●この文書は、当会会員である、宮本年起氏の創作です。

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