漢方つぼ物語(194)
少衝(しょうしょう)

〈 宝くじ当たった! 〉

 年末ジャンボ宝くじを、連番で10枚買っていた。パチンコであっという間にすってしまうほどのお金で、でっかい夢をみることができれば安いもの、そう思って。
 大晦日、抽選会の模様がテレビで中継された。まずは「23組」−おっ、組だけは合っているよ。当選番号が問題。「130916」−まるで日付みたいな当選番号。そう、2013年の9月16日。で、僕の手元のくじ番号は、っと。「130911」から「130920」− なんやて!? うそやろ? 一等の5億円と、前後賞 1億円が2本、あわせて7億円の大当たり!
 「あた、あた、当たってる!」 手が震えた。心臓がバクバクゆうてるわ。膝もガクガク。最初に考えたこと。それは、「貯金しよう!」丸ごと貯金して、当たったことは忘れよう。そして今までと同じ生活をしよう。できるやろか? 無理かも。そう、無理だった。ワイフが気付いた。
 「あんた、手、ふるえてるよ。どうしたん? 足、ガクガクやないの? こらただごとやないな。正直にゆうてみ! 宝くじでも当たったんか?」
 あかん。僕は隠し事できん。「その通り!」って、白状する声までビブラートがかかってたな。
 信心深いワイフは考えた。「神様にどんだけお供えしたらええやろ?」
 その次に夫婦で考えたのは、「とりあえず家を建て替えようか? うちの家、もう40年以上経ってるから、今の耐震基準をクリアする、がっちりした家を建てよう!」
 「それにしてもありがたいなあ。今まで真面目にコツコツ働いてきたから、天がごほうびをくれたんや。まるで夢みたいや。ほっぺた、つねってみよ。」
 ほっぺたをつねったら、痛くて目が覚めた。夢やったんや。テレビでは紅白歌合戦のトリで北島三郎が「まつり」を歌ってた。50回出場で、今回をもって紅白卒業なんやて。そんなん、どうでもええわ。

***

 新しい年が明けた。一富士、二鷹、三茄子とは、縁起の良い初夢ランキング。富士山は世界文化遺産になったから、今年の初夢としては特上や。鷹はどうやろ。午年生まれで、今年が年男の安倍総理は「タカ派」っていわれてるから、これも上り調子かも。でも中国や韓国ともっと仲よくできんもんかな。鷹よりも平和の鳩がええと思う。ナスはなんで縁起もんに入ってるんやろ? どうやら物事を「成す」、すなわち「成し遂げる」の掛け言葉から来ているらしい。野菜としてのナスは、食物繊維を多く含み、ナスニンという抗酸化物質や、コリンという血圧・コレステロールを下げる成分も含む。つまり血をきれいにする。ほれ、昔から、「ナスの良い血」というやないか。ん? あれは「那須与一」か。
 一富士、二鷹、三茄子には続きがある。四扇、五煙草、六座頭(しおおぎ・ごたばこ・ろくざとう)。扇は末広がり、たばこの煙は上昇する。座頭はまたしても語呂遊びだ。座頭市で分かるように座頭は僧形、つまり髪を剃っている、毛がない=怪我がない、というわけ。

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 新年早々、内外の様々なニュースが飛び交ったが、僕の関心を引いたのは、プロ野球ヤクルト球団のバッターで昨シーズン、王貞治さんらの記録を破り、見事、シーズン60本のホームラン記録を達成したバレンティン選手の、妻に対する暴行監禁事件。別居中の妻宅に侵入、乱暴狼藉を働いたというニュースだ。なんでそんなことをしたのか、とだれでも思う。
 妻曰く、「夫はホームラン記録を達成してから、横柄で尊大になった。」
 これには考えさせられた。記録達成もホームラン王獲得も、この選手の家庭の平和には貢献しなかったということだ。昔の歌の歌詞に「花も嵐も踏み越えて」というのがあった。よくよく考えると、このフレーズは不可解だ。いや、後半の“嵐を踏み越える”というのはイメージとして理解できる。嵐の中では人はがむしゃらに前へ進むしかない。分かりづらいのは前半のくだり。“花を踏み越える”とはいったいどういうことなのか。舞い散る花吹雪の中を行くのは華やかでありこそすれ、取り立てて困難を伴う状況とはとうてい思えない。
 “花を踏み越える”とは、輝かしい過去の業績をひきずることなく、地道に人生を歩むことらしい。栄光におごらず、謙虚さと周囲への感謝の念を忘れず、花を踏み越える度量が備わったあかつきには、宝くじが当たっても人生を誤らないで済むに違いない。
 7億円が夢に終わったことは、かえすがえすも残念至極であったが、ささやかな幸福を大切にして、堅実な人生を歩み続けることを誓う年の初めであった。

〔少衝(しょうしょう)〕心経は脇の下に始まり小指の先に至る。その末端穴。
取穴:手の少陰心経をしめくくるツボで、小指の爪の付根角、薬指に近い方。
治効:イライラや動揺、不安を鎮め、少々のことに動じない精神を作るツボ。

《作者からの一言》小指の爪の反対側の付根角には小腸経の末端穴が位置していて、これは臍下丹田、魂の宿るところに通じている。小指は心&魂に繋がる約束の指だから“指切りゲンマン”は小指でするのだ。これ、ほんと!(宮本)



上は少衝の図

 ●この文書は、当会会員である、宮本年起氏の創作です。

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