漢方つぼ物語(214)
帰来(きらい)

〈 鷺森別院 こども報恩講 〉

宮本:太郎君、いつも元気そうやな。学校ではお友だちと仲良くしてますか?
太郎:お友だちとはしょっちゅうケンカしてるで。こないだなぐっちゃった!
宮本:暴力はアカン! カッとなって殴ったんなら、後で言うことがあるやろ?
太郎:殴った後で? ああ、言うた言うた。今日はこれぐらいにしといたるわ!
宮本:こらこら、それやったらまるでヤクザや。ごめんなさいって、言わんと!
太郎:あ、そうか。そやけど太郎ね、こう見えてお年寄りには優しいんやで。
宮本:それは感心。最近、お年寄りにどんな親切なことをしましたか?
太郎:杖ついて、荷をかついで、道を探しているお年寄りを手助けしたよ。
宮本:ええことしたね。太郎君、根はとっても心の優しい子供なんやな。
太郎:荷物持って、ついでに杖も持ってあげたら。ひっくりかえりよった。
宮本:杖まで取り上げたらアカンがな。ほかにどんなええことしましたか?
太郎:電車の中でお年寄りに席を譲ったで。おじいちゃん、ここへどうぞ!
宮本:それはよかったな。おじいちゃん、ずいぶん喜んでくれたやろ?
太郎:それが、えらい怒りよった。「だれがおじいちゃんや!」って。
宮本:太郎君には年寄りに見えたけど、自分では若いつもりやったんかな。
太郎:そやのうて、「だれがおじいちゃんや、わしはおばあちゃんじゃ!」
宮本:なんや。ところで太郎君、お勉強はきちんとその日にやってるか?
太郎:せえへんなあ。明日に先送りしてたら、結局はせんとおわってしまう。
宮本:そらあかんわ。そういえば明日、掛け算の九九のテストがあるんやろ?
太郎:そやった! にいちがに、ににんがし、にさんは…兄さん二階で昼寝中。
宮本:なんやそれは。毎日、きちんとお勉強していないからでけへんのやで。
太郎:今日できることを、ちゃんとその日、その日にしていかんとあかんな。
宮本:ええこと教えたげよ。親鸞様という立派なお坊さまのお言葉やで。
“明日ありと思う心の仇桜(あだざくら)夜半(よわ)に嵐の吹かぬものかは”
太郎:桜の花を見にいったら、嵐のコンサートやってて、ラッキー!
宮本:全然ちゃうがな。せっかく桜が満開やのに、花見を日延べしてたら、夜に嵐が吹いて、ぜーんぶ散ってしまうかもわからんで、っていう意味やがな。
太郎:今日できることは、今日のうちに、さっさとしとかなあかんのやな。
宮本:親鸞さまは、4歳でお父さんを、7歳でお母さんをなくして、9歳の時にお坊さまになる決心をしたんや。京都のお寺についたら夜も更けていたので和尚様が、髪を剃って衣をつけるのは明日にしましょう、というたときに…
太郎:「明日ありと思う心のあだ桜 夜半に嵐の吹かぬものかは!」
宮本:えらい、太郎君、よう覚えたな。それならもっとええこと教えたげよう。
 親鸞様は南無阿弥陀仏(なもあみだぶつ)っていうお念仏を教えてくれた。
太郎:阿弥陀仏っていうのは阿弥陀さんのことやなあ。ここにいてはるで。
宮本:そうや。阿弥陀さんはみんなをたすけてくれる仏様です。阿弥陀さんは右手あげて、左手さげて、そして左右とも、掌は前向けておられる。これはね、サインを出してはるんやで。
太郎:盗塁か? いやヒットエンドランかな?
宮本:そやなくて、あげた右手は「必ず私のところ(お浄土)へ帰っておいで」、下げた左手は「あなたをそのままの姿で救うよ」っていうサインなんやな。
太郎:♪ありのままで〜 南無阿弥陀仏の、阿弥陀仏は阿弥陀様のことやって分かったけど、頭についてる「南無」てなんのことなん?
宮本:ええ質問やな。あのねインドの人のあいさつの言葉ってしってる?
太郎:ハロー、は英語やな、ニーハオ、は中国語や。インドは…カレークーカ?
宮本:ちゃうがな。インドでは「こんにちは」も「さよなら」も、「ナマステ―」。
太郎:焼いてないステーキみたいやな。生のステーキ、ナマステ―!
宮本:後ろの「テー」は、あなた、っていう意味なんよ。で、前の「ナマス」は、尊敬します、大事に思います、従います、っていう意味。全体では?
太郎:あなたを尊敬します、あなたを大事にします、あなたに従います。
宮本:その通り! だから、ナマステ―、っていうときは掌を合わせます。で、南無阿弥陀仏の話に戻るけど、この南無とインドのあいさつのナマステ―の「ナマス」とは、同じ言葉です。とすると、南無阿弥陀仏の意味はどうなる?
太郎:阿弥陀様を尊敬します、阿弥陀様を大切にします、阿弥陀様に従います。
宮本:よくできました。 このお念仏をとなえると、阿弥陀様はサイン通りに、私たちを、そのままの姿で、救ってくださるんです!
太郎:それやったら何回もとなえようっと! 南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏…

〔帰来(きらい)〕足の陽経でありながら胸腹を下る胃経の29番、下腹のツボ。
取穴:からだの前正中線(正面中央)の左右2寸、おへその下4寸にある。
治効:泌尿器・生殖器の病に。身も心も温め阿弥陀様の処に帰って来れるツボ。

《作者からの一言》本願寺鷺森(さぎのもり)別院は、和歌山市鷺の森にある浄土真宗本願寺派の寺院で、西本願寺の別院です。報恩講は宗祖親鸞様のご恩に報いお徳に感謝するために、その祥月命日前後に営まれる法要です。(宮本)



上は帰来の図

 ●この文書は、当会会員である、宮本年起氏の創作です。

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