漢方つぼ物語(217)
漏谷(ろうこく)

〈 園子がくれた宝物 〉

 公益財団法人 日本ダウン症協会(略称;JDS)は、ダウン症候群がある人たちとその家族の生活の質向上を目指して活動している団体です。毎月、会報「JDSニュース」を発行しています。
 私の長女・園子はダウン症のある娘です。今年、平成27年の1月に30歳の誕生日を迎えました。そのバースデーを祝ってくれるかのように、思いがけずJDSニュースの1月号の表紙を、お遍路姿の園子が飾りました。さらには、本文中に2ページ見開きで、「表紙の言葉」として私が園子への思いをしたためました。タイトルは「園子がくれた宝物」です。以下にその全文を引用します。

 私ども夫婦が授かった最初の子どもである園子がこの世に生を受けたのは、今からちょうど30年前の1月5日のことです。もし園子が生まれていなかったら、私の人生はずいぶん薄っぺらなものになっていたでしょう。…そう確信を持って言えるほど、園子はたくさんの大切なものを私どもにもたらしてくれました。

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 園子は統合保育を実施している和歌山市内の私立の幼稚園、みどり幼稚園で、ほぼ3年間、健常の子どもたちに交じって伸び伸びと育ちました。「ほぼ」と申しますのは当初、あまりにからだが小さく、「ほかの子どもたちに押しつぶされないか」との心配から入園を一旦は断られたのですが、ふた月遅れで受け入れて頂いたのです。小学校・中学校も地域の学校の少人数学級に受け入れて頂き、元気に通学しました。心優しいお友だちと理解のある先生・保護者に恵まれて、有意義な学校生活を過ごすことができました。保護者の方が、
「園子ちゃんと同じクラスになってから、うちの子がずいぶん思いやりのある優しい子になり、嬉しく思っています。」
と、言ってくださったことやクラスメートの一人から、
 「園子ちゃんのお父さん・お母さんが、園子ちゃんをとても大切にしている姿を通して私は、私の両親も私に対して、とても大きな愛情をもって育ててくれているのだ、ということを知ることができました。」
と書いた手紙をもらったことは、今思い出しても忘れがたい想い出です。
 昨年の夏、中学校3年生のときのクラスの同窓会があり、父母同伴で(!)参加しました。園子は終始、楽しそうでした。二十歳のときの同窓会以来です。

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 園子の誕生以来の主治医である和歌山県立医大付属病院染色体外来の医師・月野隆一先生と、そこにつながる日本ダウン症協会和歌山県支部(通称ひまわりの会)の仲間たちとの交わりも園子がもたらしてくれた得難い宝物です。県医大との関わりでは、もうひとつ、園子のご縁で頂いた宝物があります。7年連続でケアマインド特別講師として、県医大の1年生(医学部100名、保健看護学部80名)の学生たちに毎年、「ダウン症特別講義」をする機会を与えられていることです。最近は受講した学生全員の感想レポートを後日送って下さるのです。そこには、学生たちが、将来身ごもった自分の子に、もし染色体異常があることが判明したときに、産むかどうか、真剣に葛藤した思いが綴られています。

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 園子はなかなかの信心家です。神社やお寺が大好き、お墓参りもいそいそと同行します。表紙の写真は数年前に四国八十八カ所参りをしたときの写真です。訪れる寺ごとに、線香を立て、ろうそくに火を点け、あらかじめ願い事と名前を記入した納め札を箱に入れ、お経を唱えます。どうです、様になっているでしょう?
 私がこの原稿をしたためている間、園子はずっと私のそばに座って見守ってくれています。「わたしのこと、じょうずに書いてね」、っていわんばかりに。
 ボキャブラリーの少ない園子ですが、そのひとことひとことにはエネルギーがこもっています。園子にニコッと笑って「ありがとう!」って言われたら、この子の喜ぶことを、もっともっとしてやりたいと思います。
 園子は私ども家族の活力源です。

〔漏谷(ろうこく)〕足の親指に起こり脚内側を上り腹・胸に至る脾経の第7穴。
取穴:下腿内側、骨の内縁後際、膝の皿の下縁と内果のてっぺんとの間の下5/2。
治効:精神状態を整え癒し効果あるツボ。まるでダウン症のある人のように。

《作者からの一言》園子が表紙に掲載されたJDSニュース平成27年1月号を寄稿者贈呈分として余分に頂戴できました。私は園子がお世話になった方々にこれまでの感謝をこめてお届けしました。そして1部を、私の高校時代の同級生で、地元医師会で枢要な役割をつとめる友人に次のような短い手紙を添えて送りました。
「M君、過日の同窓会でダウン症の娘がいることをカミングアウトした折、いかにも気の毒だと労りの言葉をかけてくれた君に、これを届けます。娘への私の偽らざる思いを、理解してもらえたら幸甚です。もし君の患者さんでダウン症と関わる人がいたら、この冊子を読んでもらってください。」(宮本)



上は漏谷の図/日本ダウン症協会会報

 ●この文書は、当会会員である、宮本年起氏の創作です。

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