漢方つぼ物語(235)
脾兪(ひゆ)

〈 県医大ダウン症講義の感想レポート 〉

 平成27年9月29日午後、和歌山県立医科大学三葛キャンパス大講義室で私が行った、医学部・保健看護学部1年生を対象とするケアマインド特別授業「ダウン症について」を受講した180人の学生全員の感想レポートが届いたのは、講義から一週間もたたない、10月5日のことだった。そこには、医療従事者を志す若者たちの純真で使命感に満ちた感想がつづられていた。

 私の地元にもダウン症の人が何人かいます。私は、ダウン症の人というのは短命で知能が遅れているという予備知識があり、そういう人たちを見る度に正直かわいそうで痛ましいと思っていました。またそのご家族も辛いのに、よく毎日、生活を送れているなあと感心していました。
しかし今回の講義を聞いて、ダウン症の人によって支えられている人もいるのだ、ダウン症の人もいきいき生きられるのだと知り、あまり悲観的にそういう人たちを見なくてもよいのだと分かりました。
宮本さんは「ダウン症の子どもによって夫婦の絆が深まり、子によって親は育てられるという大切な事実を知った」とおっしゃっていて、僕は一見不幸に思えることでも考え方や味方によって幸せにとらえられるという大切なことを学ばせてもらいました。(医学部男子学生)

 真実を受け入れることの難しさや大切さを学ぶことができた。また宮本さんが娘さんのことを本当に大切で、大好きであることがとても伝わってきた。「この子がきっと我が家を幸せにしてくれる」というお母さんの言葉がすごくすてきでした。
医療者として、支援できることをしていきたいと思ったし、また、自分の子どもを大切にしたいと思った。(保健看護学部女子学生)

***

 私は受講し、感想を寄せてくれた学生たちに、お礼と質問への回答をしたためた。
 9月29日にダウン症についてお話しさせて頂いた宮本敏企です。その際は、熱心に私の話を聴いて下さって、ほんとうに嬉しかったです。
そして今日、皆さん方の感想レポートをお届け頂きました。妻と二人で、そのすべてをじっくりと読ませていただきました。感謝と感動で胸がいっぱいになりました。私が皆さんに伝えたかったことを、しっかりと受け止めて下さっていたからです。心からお礼を申します。有難うございました。
 私は確信します。皆さんはきっとすばらしい医療人になられます。
 感想文の中でいくつか質問を頂きました。その質問はいずれも私が伝えようと考えていたのに飛ばしてしまった事柄でした。ここに講義の補足としてお答えいたします。

質問 「医療技術が発達して、優秀な子をえりすぐりできてしまう」という倫理的な問題について、どう考えますか。
お答 かつてヨーロッパで、美味しくて繁殖力の強いポテトがもてはやされました。すべての農家が競ってその品種を育てました。ところがいいことずくめのポテトを冒す病気が蔓延し、その品種が絶滅、多くの餓死者が出たのです。
ダーウィンいわく、「強いものが生き残るのでも、賢いものが生き残るのでもない。環境の変化に適応したものが生き残るのだ。」
有性生殖によって、我々人類は多様な形質を生み出します。その進化の過程で、染色体異常や様々な病気も生まれます。現在、“病気”と認識されている形質が、環境の変化の中で、ことによると、人類を絶滅から救うことになるかもしれないのです。

質問 (ハンディキャップのある人に)どこまで手助けが必要か、直接本人に尋ねるのは、気分を害してしまうでしょうか?
お答 手助けをしたいという真摯な気持ちで尋ねて、相手の気分を害することはありえません。ただ、その人を良く観察して、またその人の身になって想像力をはたらかせることで、どんな手助けが有効かを考えてみることも重要ではないでしょうか。「愛は凝視の能力」という言葉が私は好きです。

質問 「どうして自分の子供がダウン症?」と思ったことはありませんか?
お答 正直、そう思いました。私ども夫婦は出産の直前に、県医大に程近い名刹・紀三井寺の貫主様に、人の子の親となる心構えをお尋ねする機会に恵まれました。
貫主様は「赤子は泣くもの。どんなにやかましく泣いても、温かく受け止めるよう」とおさとし下さいました。
ダウン症のある園子が生まれて、私は妻に申しました。「貫主様のおさとしを賜ったときに、『どんなに泣いても優しい心で受け止めよう』と心に誓ったよね。」妻は深く頷きました。
「泣く子を受け入れる心構えができたから、神仏はさらに大きな試練を与えて下さったのではないだろうか?」…ハンデのある子どもであるからこそ、なにか前向きの理由、子育ての意味がほしかったのです。
このことはその後もずっと、私ども夫婦を支え続けてくれています。

〔脾兪(ひゆ)〕背中の中心線(後正中線)外方3寸に並ぶ臓腑の治療点の一つ。
取穴:背骨で肋骨を出している胸椎中、最も下と下から2番目の間で外3寸。
治効:9・10胸椎間の肝兪と併せ2〜3歳児の泣き止まぬ疳の虫に常用する灸点。
《作者からの一言》園子のお話をさせて頂く機会が他でも増えています。(宮本)



上は小児斜差の灸/感想レポート

 ●この文書は、当会会員である、宮本年起氏の創作です。

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