漢方つぼ物語(242)
陰陵泉(いんりょうせん)

〈 健康セミナー2016 〉

 皆さん、一般社団法人和歌山県鍼灸マッサージ師会主催の健康セミナーへ、ようこそお運びいただきました。第15回目を迎えた今回のテーマは、「ひざの痛みと、その予防」、副題が「100歳まで歩けるひざ作り」です。
 まずはひざの仕組みについてお話します。膝関節は3つの骨でできています。太ももの骨=大腿骨、膝のさら=膝蓋骨(しつがいこつ)、そしてすねの骨=脛骨(けいこつ)です。
私、県立盲学校の非常勤講師をさせて頂いておりまして、この3つの骨の覚え方を、こう教えます。相撲部屋の新弟子が兄弟子に「どうやったら強くなれますか?」と尋ねます。すると兄弟子がそれに応えて言います。
「よし、ダイタイのコツ教えたろ」 はい、もう大腿骨が出てきましたよ。ダイタイのコツ、大腿骨。次は膝蓋骨です。兄弟子の説教が続きます。
「大事なのは“出げいこ”や。この相撲部屋の外、部屋の外やから室外やな、シツガイでコツコツとケイコツけて(けいこ付けて)もらうんや!」
 大腿骨・膝蓋骨・脛骨、ひざを作る3つの骨が出そろいました。

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 まず骨の実物をご覧いただきましょう。といっても模型です。脚の実物大の模型。この模型を元にして、ひざの部分を紙粘土で作ってみました。
実はひざはかなり不安定な関節です。その理由は、脛骨が大腿骨とすれ合う関節面を観察するとお分かりいただけます。浅いですよね。脚の付け根の股関節と比較すると一目瞭然です。おまけに、関節面の内・外が大きさも形も異なります。内が大きく、外がやや小さいですよね。 
 そこで、その不安定さを補うための仕掛けが必要になります。それが、半月板と靭帯です。
まずは半月板。内側は英語の“C”の形、外側はほぼ円形です。これが大腿骨と脛骨の間にあることで関節の動きは滑らかになります。
そして靭帯。一般に靭帯は関節を構成する骨と骨とをしっかりとつなぐ働きをします。大腿骨と脛骨を前後交差するようにつなぐ十字靭帯や、内外両横で関節を補強する側副靭帯などがあります。
また、ひざ全体を関節包という袋がすっぽりと包んでいて、関節を守るとともに潤滑液を分泌して動きを滑らかにし、炎症が起こったときに、それを鎮める働きをします。 炎症がひどくて潤滑液が出過ぎますと、この袋が膨れて関節包がキンキンに腫れ上がると、「ひざに水が溜まって痛くてたまらん、お医者さんのところで抜いてもらおう」ということになるわけです。
 もう一つ、ひざ関節の動きを滑らかにしているものがあります。それは大腿骨と脛骨の関節面をおおっている軟骨です。これが擦り切れたり、うまく作られなかったりすると炎症が起こるのです。
その場合、じっとしているだけでは炎症はなかなか静まりません。重みをかけずに痛みの出ない範囲で膝の屈伸をするほうが早く良くなります。軟骨はその元になる細胞と血液中の酸素とで作られるのですが、運動によって血行を良くすることが新しい軟骨を作るために必要だからです。

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 最後に、どうしたら百歳まで良い膝でいられるか、というお話をすることにしましょう。二つ、重要なことがあります。
 一つは運動です。適度な運動を続けることによって、軟骨のみならず、骨もその周囲の様々な組織も良い状態を保つことができます。おすすめは水中歩行。水の抵抗にさからって歩くことはひざ関節周囲の筋肉を鍛えます。そして水の浮力のおかげで膝に体重がかかりにくく、ひざが弱りかけている人にも無理のない運動となります。痛みをこらえて、強すぎる運動をしたり無理に正座をしたりするのは逆効果なのです。
 もう一つ、百歳まで快適に歩けるための膝作りの条件、それはズバリ、体重のコントロールです。ひざには体重のほとんどがのしかかります。歩いたり走ったりするとなおさらです。余分な体重をカットすることが重要なことは容易に想像できます。
身長に対する適切な体重の目安を知ることのできる指標があります。BMI=「体格指数」と呼ばれるもので、計算式は体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)です。
私は体重65s、身長1m60cmですから65÷1.6÷1.6≒25.4 となります。これを25 以下になるようダイエットします。逆算して私の適正体重を出してみましょう。
 25×身長(m)×身長(m)で出ます。私の適正体重は25×1.6×1.6で64kgとなります。1s減らさなくては!
 (平成28年3月6日和歌山JA会館における第15回健康セミナーより)

〔陰陵泉(いんりょうせん)〕足の親指から発し、胸に至る足の太陰脾経第9穴。
取穴:下腿(足首と膝の間)内側の骨(脛骨)の縁を撫で上げて指の止まるところ。
治効:膝関節痛に用いる代表的なツボ。腰痛や脚の神経痛以外に婦人疾患に。
《作者からの一言》「東海道中膝栗毛」の膝栗毛とは膝を栗毛(=馬の脚)の代わりにして歩く、即ち徒歩旅行を意味するらしい。歩くには、膝が大切。(宮本)



上は陰陵泉の図/膝関節の紙粘土模型

 ●この文書は、当会会員である、宮本年起氏の創作です。

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