漢方つぼ物語(265)
  陰市(いんし)  

〈 デンマーク友好150周年 〉

 1867年に日本はデンマークとの間に“修好通商航海条約”を締結している。本年2017年は明治150年にあたるから、150年前のこの年は明治元年の前年、慶応3年である。明治維新の前夜とも言えるこの時期に、日本はデンマークと友好条約を結んでいたのである。

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 1957年2月10日の夜、和歌山県日ノ御埼沖で一隻の木材運搬船“高砂丸”が船舶火災を起こした。強風の中、乗組員3名は海に投げ出された。そこに、一隻のデンマークの貨物船“エレン・マースク号”が通りかかり救助を試みる。
海上に下ろされた救助艇に救われた高砂丸の船長が縄梯子(なわばしご)を伝い、デンマーク船の甲板に登り切るかと期待されたが、冬の海で力を使い果たしたか船長は再び海中に転落した。
エレン・マースク号の機関長クヌッセンさんが日本の船長を救うべく、勇敢にも海に飛び込んだのはそのときであった…。
 翌日の朝、クヌッセン機関長の遺体は、日ノ御埼北側の浜辺で発見された。高砂丸の乗組員3名と併せて、4名もの尊い命が失われたのだ。

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 2002年初夏、日本と韓国共同開催のサッカーワールドカップが開催された。5月末の開会に先立つキャンプ地として、デンマーク代表チームは和歌山市を選んだ。そのことを契機に、かつてのクヌッセン機関長の人類愛に満ちた行動が再び鮮やかに想起された。デンマークチームを応援しよう、というグループが結成されたのはこのタイミングであった。和歌山市在住の新家兄璽(しんけ・けいじ)氏を代表とする市民グループ“和歌山ローリガンズ”がそれである。
 和歌山ローリガンズのデンマークチーム応援への力の入れようは徹底していた。韓国で行われたデンマークチームの試合にまで大挙して応援に押しかけたのだ。資金源は、テレビの人気番組“クイズ・ミリオネア”。新家代表は、このクイズに出演して決勝に勝ち進み「デンマークチーム応援資金」として、なんと金500万円をゲットしたのだ。
翌2003年から「コムサ!!デンマークカップ」と冠したフットサル大会を、毎年欠かさず開催している。2010年のワールドカップでは運命のいたずらか日本代表チームがデンマークチームと直接対決することになったが、迷わずデンマークチームを応援してマスコミを賑やかせた!

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 2017年2月10日、クヌッセン機関長の60年目の祥月命日にあたるこの日、デンマークのメテ・ボク文化大臣(女性)、フレディ・スヴェイネ駐日デンマーク大使、さらにはクヌッセンさんの乗っていた船エレン・マースク号が所属していた海運会社のヨーゲン・ハーリング北東アジア長らが、美浜町の日の岬パーク内の機関長の胸像前で開かれた「慰霊献花の集い」に参加、花束やクヌッセンさんが好きだったキンセンカを手向けた。
文化大臣のメッセージ。
「和歌山の皆様がクヌッセン機関長への感謝の気持ちを持ち続けられているのと同様、私たちデンマーク人は皆様の友情に感謝しています。皆様はこの顕彰碑を建立し、救命艇を保管してくれています。またクヌッセン機関長の功績を基に、自己犠牲と人間愛への高い精神を伝えてこられました。」
 一行は御坊市「花ご坊」で歓迎昼食会、夜は、和歌山市のホテルアバローム最上階、イタリアレストラン・ツインバードでの晩餐会に臨まれた。
 和歌山市での友好150周年記念晩餐会には和歌山県知事、御浜町長・副町長、県職員多数と共に、民間での友好の立役者として和歌山ローリガンズの面々も列席した。
そこで私には一つのミッションが与えられた。それは「英語で余興をして、場を盛り上げる」という使命である。

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 I am Toshiki Miyamoto, the most famous entertainer in Wakayama. (和歌山で最も有名なエンターテイナー・宮本としきです!)という挨拶から始めて、赤・白・青、三枚皿回し。デンマークと日本の国旗が共に紅白のツートンカラー、和歌山を象徴する色が青(空青し・海青し・山青し)、と英語で説明した上で、triple-plate-spinning(三枚皿回し)を決めた。
お次はマジック二題。右手にキング、左手にクイーンのカードを持ち、“Change! ” と叫ぶと入れ替わる。更に、目に見えないカードの束から一枚を文化大臣に選ばせて、何のカードか言って貰う(ちなみに「ハートの10」とおっしゃった)。
裏向けでカードの束に戻すジェスチャーをして頂き、魔法で目に見えるカードに変えて、一枚だけ裏向けのカードを抜くと、それはまがいもなく「ハートの10」。大臣が心底驚いたところで、”Mange tak ! (“マンゲ・タック”=デンマーク語で「どうもありがとう!」“ と言いつつ、それまでずっと着けていたカツラを、帽子を脱ぐように取って深々とお辞儀をすると、拍手はしばらく鳴り止まなかった!

〔陰市(いんし)〕目尻から起こり足の薬指の先に至る足の少陽胆経の第31穴。
 取穴:気をつけの姿勢で伸ばした腕の中指の先が太ももの外側に付くあたり。
 治効:冷えに効くツボ。船長が海で体が冷え切っていなければ助かったかも。
 《作者からの一言》余興があまりにも大ウケで大臣から7月にコペンハーゲンでもやってほしい、と「ご招待」を受けた。費用はこちら持ちだけどね。(宮本)



上は陰市の図/友好の3枚皿回し/文化大臣相手にマジック

 ●この文書は、当会会員である、宮本年起氏の創作です。

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