漢方つぼ物語(274)
  定喘(ていぜん)  

〈 第37回腹話術発表会 〉

 会長挨拶で催しは始まる。平成29年10月14日午後1時。和歌山県民文化会館小ホールの緞帳前中央に歩み出る。デンマークを訪問したこの年を記念して、人魚アリエルの人形を抱いて観客の前に登場、腹話術で挨拶。
敏企:腹話術をしていて便利なことは、自分が言いにくいことを人形が代わって言ってくれることです。
アリエル:ひどいわ!
敏企:腹話術をしていて不便なことは、私が風邪を引くと(コホン、コホン)
アリエル:コホン、コホン
敏企:人形も風邪を引いてしまうことです。
アリエル:いやだわ!
敏企:そして、腹話術をしていてうれしいことは、毎年の発表会に、こんなにたくさんの皆さんのご声援が頂けることです。
アリエル:うれしいわ!
敏企:ほんとうに有難うございます。(カツラを取って、深々とお辞儀する)

   ***

 今年の新機軸その1は人形コント。題して「Dr.ヤブコージの診察室」。医者姿の人形・ヤブコージ先生を膝に乗せた私の役どころはナースのトシ子。冒頭の会長挨拶をこなした後、すぐに化粧にかかる。妻から借りた化粧ポーチにはファンデーション・白粉(おしろい)・頬紅・口紅。以前に女装の演技をしたときに厚化粧をしてくれた会員仲間の奥 百合子さんは今回、出番がトップで手伝いを頼めない。サプライズゲストの竹の屋善右衛門さんのアシスタント、鷺村澄子さんに手伝ってもらうことにする。
化粧を始めたところに飛び込んできたのが産経新聞和歌山支社の女性記者。化粧しながらで良ければ、と取材を受けた。腹話術協会の37年に及ぶ誇るべき歴史について語り始めるとおのずと熱が入り、口を動かしている間は口紅が塗れない。そこへ突然「出番です!」の呼び出し。慌てて化粧を仕上げて舞台に出る。
ヤブコージとナースの掛け合い、次々に訪れる患者さん。恋わずらいの女の子と認知症予備軍のおばあちゃんに絶妙のアドバイスをして診察を終わろうとしたところへ、チンパンジーが乱入。「わしは獣医じゃないよ、加計学園に行っておくれ!」で落とす。大受けだ!

   ***

 新機軸その2は人形と子供落語家との大喜利合戦。子供落語の全国大会で受賞歴のあるわかやま楽落会のメンバー6名が特別参加。真紅の特大毛せんに人形を抱いた腹話術協会のメンバーと子供落語家が浴衣姿でずらりと並ぶ。これは絵になった。
小話対決。ぴょんぴょん亭うさぎちゃんが「政治家の失言とかけてネクタイとときます、そのこころは「どちらも自分のくびを絞めます」。対して腹話術協会の山田三千子さんは「南京玉すだれとかけて明日の翌日とときます、そのこころは『あ、さて、あ、さて、あさって!』」と返し拍手かっさい。

   ***

 子供といえば、毎回この催しの半ばで小学生の和太鼓演舞の友情出演が入る。今回、いつもと違ったのは、この直前に会場に駆けつけてくれた和歌山市長の尾花正啓(まさひろ)さんが祝辞を述べてくださったことだ。
 勇壮な和太鼓の演奏が終わり、下ろされた緞帳の後ろで片付けをする間に、私のもう一つの出番がある。「たった3分であなたも腹話術師!」をキャッチフレーズとする腹話術ミニレッスンだ。今回のレクチャーは「人形の口の開け方」。
「おしゃべりするとき、上あごを上げるのではなく、下あごを下げるのが原則です。だって私たちも、上あごを上げ下げしておしゃべりはしないですよね。ワニやカバでない限りは。人形ふーちゃんを使って実際にやってみます。」
「もう一つ大事なことは口の開け閉めの回数です。ハイで1回、ドウゾで2回、アリガトウで3回。おわかりですか? では昨年、ご好評を頂いた貴ちゃん人形に今回も登場願いましょう。(と、ここで市長の奥様が登壇)」
「尾花市長さんの奥様です。さきほどご主人に舞台袖で、『この後、奥様に人形になって登場願うんですよ』と申しましたら、『僕のほうが人形役をしたいな。挨拶よりそのほうが楽でいい、って妻に言いました』とおっしゃっていました(奥様「ええ、そういってました!」)。
さて口の開け閉め、背中をポンと叩いたらお口を1回パクッ、ですよ。(ハイ・ドウゾ・アリガトウ、をパクパク練習)」
「それでは本番とまいりましょう。貴ちゃん、和歌山はお好きですか?」
「ハイ(口を1回開閉)、ダイスキヨ(3回開閉)」
「完璧です。ではもう一つ、旦那様を愛していますか?」
「ハイ(1回)、アイシテル(3回)」
「良くできました。(会場で観ておられる市長さんに向かって)市長様、奥様、愛しておられるそうです!」

〔定喘(ていぜん)〕咳・喘息、蕁麻疹(じんましん)に効く奇穴、治喘とも。
 取穴:最下の頸椎と最上の胸椎の間で、正中の左右5分(約1cm)。1寸とも。
 治効:風邪を引いて咳が止まらないときの特効穴。人形に効くかどうかは疑問。
 《作者からの一言》来年は市長さんを人形にとの計画もある。楽しみ!(宮本)



上は定喘の図/貴ちゃん人形と

 ●この文書は、当会会員である、宮本年起氏の創作です。

[前のページへ] [次のページへ] [メニューへ戻る]
[トップへ戻る]


社団法人 和歌山県鍼灸マッサージ師会
 〒640-8341  和歌山市黒田97−14
 電話  073-475-7771  FAX   073-474-2241

 メールはこちらまで  info@washinshi.com