漢方つぼ物語  (65)

天(てん) 窓(そう)


 2005年の新年が明けた。今年の年明けはとりわけ感慨深い。私の長女・園子が成人を迎える年だからだ。園子は昭和60年の1月5日に生まれた。静かに雪の降る朝だった。生まれてまもなくダウン症であると診断された。染色体の異常に起因する先天性の疾患で、知的障害を伴い身体の発達も遅れるといわれた。けれども園子は善意あふれる周囲の人々との出会いの中でゆっくりだが幸せな成長を続けて、成人の年明けを元気に迎えることができたのだ。
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 1月3日、園子の小学校時代の同窓会が催された。和歌山市立吹上小学校の6年1組・2組合同のクラス会だ。同窓生の三分の二以上が出席、当時のクラス担任の二人の先生もかけつけてくれた。注目のメインイベントはタイムカプセル・オープン。蓋付きのポリバケツから8年前の思い出があふれ出た。園子の担任をつとめて下さった先生も出世なさって現在は教頭先生。ご苦労が多いのだろう、年末に突発性難聴をわずらって今も平衡感覚がおかしいとおっしゃる。これは天窓(てんそう)のつぼの症状だな、ぜひ一度治療させていただこう。
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 1月5日、園子の同窓生の一人である河村憲治君が副会長を務める鳥取大学落語研究会(オチケン)のメンバーが、ふるさとの吹上地区公民館で落語会を催した。名付けて新春吹上若葉寄席。おりしも今年は酉年なので、こんなキャッチコピーを考えた。トリ歳の年の初めの初笑い、鳥取大学五人衆、お代はいらないきいとくれ…。当日、大入り満員の観客は大いに笑い、楽しんでくれた。園子の二十歳の誕生日が笑いで包まれたことが、この上なくうれしかった。
 私も腹話術で特別出演、落語会にふさわしい演出をと考え、久しぶりに三題話に挑戦した。その場でもらった三つのお題で即席に腹話術を演じる。前半の落語三席が演じられた後、後ろ向きで客席に三つの風船を投げ、たまたまそれを受け取ったお客さんからお題をいただく。まずは「お年玉」次いで「津波」さらに「宝くじ」、とそろったお題を高座の後ろのホワイトボードにしたため、控え室に。仲入りの10分で作り上げたのはこんなお話だった。

 ○「坊や、新年早々うれしそうな顔しているね。」
 ×「ばっちゃん(おばあちゃん)にお年玉もらったんや。」
 ○「ちゃんと貯金したかい?」
 ×「ううん、もっと増やそうと思って…」(勘のいいお客さんの笑い声)
 ○「もうわかっているお客さんもいるようやけど、どうしたの?」
 ×「宝くじ買うたんよ。去年の暮れに津波で被災したところへ義捐金を送りたいの。」
 ○「それは感心。では宝くじが当たるこつを教えてあげよう。まずは詩吟を習う。詩吟は、門松の真ん中に立っている竹に通じるめでたさがあるよ。」
 ×「詩吟と竹がどうして通じるの?」
 ○「どちらも『節がついている』。それからなぎなたも縁起がいいよ。」
 ×「なぎなたはどうして縁起がいいの?」
 ○「ツイて(突いて)ツイてツキまくる、というわけやね。」
 ×「なるほど!」
 ○「そしてできるだけ高いところへ登るのが宝くじを当てる決め手です。」
 ×「なんや津波のときと似ているなあ。」
 ○「宝くじは『絶対に当たる』という確信を持つことが大事。くじに当たるのも津波も、前提となるのはジシン(自信、地震)でございます!」
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 1月8日、園子の最後に通った学校である和歌山大学教育学部附属養護学校で成人のお祝いをしてくれた。11人の同級生のうち仕事の都合などで出席できなかった3人を除き8人が祝福の席に着いた。祝辞、歓談、新成人インタビュー、花束と記念品の贈呈と続き、参加者全員で「世界で一つだけの花」を歌って、盛り上がりは最高潮に達した。締めくくりは新成人の保護者を代表してのお礼のことば。なんと私にお鉢が回ってきた。ここはピシッと決めなきゃ。

 「『海は陸地を隔てているのではない。つないでいるのだ。』ということばがあります。科学文明の発達により海が陸のつなぎとなったように、精神文化の発達により、今まで障害と思われていたことが、人と人が心をつなぐえにしとなる社会が実現しつつあります。この新しい時代に新成人として新たな一歩を踏み出す子どもたちに成り代わりまして、替え歌を一曲ご披露申し上げます。(細川たかしの「心のこり」の節で)わたしハタチよ 大人なのよね お酒だって 選挙だって  できるけど 大事なのは 心のやさしさ 仲間をたくさん作るわ 大人になって 思い出すの 附属養護のことを 大人になっても これからもずっと 忘れはしないよ いつでも…。」

〔天窓(てんそう)〕手の小指から肩甲部を経て耳前に至る小腸経の第16穴。
 取穴:喉の高いところ(喉頭隆起)とあごの骨の後ろ角(下顎角)の中間の
     高さで胸鎖乳突筋の前縁、外頸動脈が拍動しているところに取る。
 治効:難聴・耳鳴などの耳疾患や頭痛、また咽喉部の張りや痛みにも用いる。

 《作者から一言》
  あけましておめでとうございます。お蔭様
 で年末年始を、エネルギッシュに過ごさせて
 いただきました。大晦日から元旦にかけては
 江戸時代から伝わる鐘つき堂での腹話術公演、
 元日早朝はお城を一周する「連れもて歩こう
 走ろう会」参加や初詣。「漢方つぼ物語」を
 いっそうパワーアップすることをお誓い申し
 上げました。どうか本年も、相変わりませず
 宜しくお付き合い下さいませ!(宮本敏企)

 ●この文書は、当会会員である、宮本年起氏の創作です。

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