漢方つぼ物語(77)
少(しょう) 商(しょう)

和歌山城のすぐ近く、和歌山市吹上の三年坂通りに岡山時鐘堂がある。紀州五代藩主で徳川八代将軍となった徳川吉宗公の時代から、時をしらせることで城下の人々に親しまれてきた。史跡として県の指定文化財となっているこの岡山丁の時鐘堂こそが、私の一年間の腹話術・手品のボランティアを締めくくる舞台である。大晦日の夜11時過ぎ、人形と手品の道具をトランク二つとスポーツバッグ一つに詰め、50tバイクに積み込んで意気揚々と家を出発。まずは白玉入りのしるこの接待を受けて一年の無事を感謝しつつ鐘をつく。時鐘堂は稲荷神社と一体になっていて、その本殿脇の特設舞台に荷物を運び込む。
「腹話術、もう始まるの?」
と声をかけて頂いたのを合図に今年最後のショーのスタートである。一番手は韓国ドラマで大人気のヨン様に扮した太郎君の人形。寒いのでちゃんちゃんこを着せている。チェ・ジウも来てますよと、おさげ髪のかつらを私がつける。
「ジウ姫、好きな食べ物はなに?」
「こんにゃくが好きなのよ。あなたと同じで裏も表もないから。あなたは?」
「なんていったって玉子!でも白身は苦手。にゅるにゅるしてて気持ち悪い。」
「あら、ヨン様は玉子が好きだけど白身は苦手なんですね。」
「そう、好きなのは黄身(君)だけだよ!」
 オチが決まったところで続いては、近ごろ手に入れたアメリカ製の赤ちゃんとおじいちゃんの人形。けたたましい泣き声と共に赤ちゃん登場。おっぱいを飲ませて、ゲップまでさせた後、おじいちゃんの人形と一緒に時事クイズ。
「いよいよわが国も本格的な少子高齢化の時代。でも中には子沢山の人はいるものです。さてそれでは、日本一の子だくさんは子どもが何人いるでしょう?」
12人、いや14人、とさまざまな解答が飛び交う中、正解の発表。
「正解はなんと83人。それも今年の夏いっぺんに生まれました。子だくさんナンバー・ワンのその人の名は、小泉純一郎。国会に、チルドレンが83人!」
 このクイズが大ウケで、しばしクイズ大会となる。
去年、世界遺産に登録された高野山にお参りすると、その後はすべて事なく運ぶとか。それはなぜでしょう? ハイ、高野のお寺は金剛峰寺。「今後、無事」に行くわけです(このネタ、和歌山出身芸能県人会の桂文福さん提供)。
その高野山には参拝した人から、お礼の手紙がわんさと届くと言います。なぜ? それもそのはず高野山は世界の霊場(礼状)だからです!
これからは和歌山が日本の未来の鍵を握っています。なぜ? ジャジャーン、和歌山は紀伊(キー)の国だから(これら2問は、同じく千田やすしさん提供)。
 もっともっととせがまれたが、用意したクイズのネタはここまで。すると、助っ人登場! かぶりつきで見ていた小学生の女の子からなぞなぞの問題。
「はさみははさみでも、切れると困るはさみはなあに?」
わからん。降参! え? 答は「洗濯ばさみ」。なるほど、こりゃ切れたら大変!
 洗濯ばさみと聞いて妙なことを思い出した。だいぶん以前に、手足の指先を洗濯ばさみではさむ健康法が話題になったことがある。今にして思えば、あれは漢方的には意味のあることだった。ツボが並んでいる道筋を経絡(けいらく)と呼ぶが、経絡の末端のツボはおおむね手足の指先、爪の付け根の両端辺りにあり、「井穴(せいけつ)」という。文字通り、各経絡の「気」が井戸水のように出づるところ、という意味だ。例えば手の親指には少商という肺経の井穴がある。このツボを刺激するとノドの痛みなど、たちどころに消えるのだ…。
 なぞなぞに正解したらごほうびはクラッカー。あとで新年のカウントダウンに使ってもらう。

***

 腹話術・なぞなぞと来て、締めくくりはマジックショー。
「これに取り出しましたるは、来年の運勢を占う不思議なサイコロ。こうして後ろに回すと、ほら白から黄色に色が変わっちゃった。え、裏ですか? 裏も黄色に決まっています。では、この裏は? 黄色ですって? いつまでも黄色ではありません。世の中どんどん変わってるんですから。はい、赤です。そのさらに裏は? 黄色? いえいえ、緑です。さあ、どんどん色変わりしていきますよ。当てて頂きたいのは緑の裏、これをズバリ当てると来年いいことがあります。ピンク? 赤? 橙色? 黄色? 緑? 青? 紫? 赤紫? (裏が虹色になっているのを見せて)全員正解! 皆さん、きっと来年は大吉、当たり年ですよ!
さあ、今年納めのマジックは景気よく何でも大きくなる魔法のバッグと参りましょう。手始めにキラキラと美しく輝くこのミラーボール。バッグに入れておまじない。さあご一緒に、大きくなあれ! ほらこんなに大きくなりました。それならお金を大きくしない手はありませんよね。ものは試し、この五百円玉を入れると…子どもの顔ほどの大きな五百円玉になっちゃった! 今度はおサツと参りましょう。千円札を入れてっと。大きく大きくなあーれ! おーっと! こりゃなんだ? おサツはおサツでも、でっかいサツマイモ! 違うよねえ。大きくなって札束になあれ! 出てきた、出てきた。札束が出てきました!」
 と、ここでタイミング良くカウントダウンの時間。新しい年の幕開けまで、あと10秒、9秒、8、7、6、ゴー、ヨン、サン、ニイー、イチ、ゼロー!
なぞなぞに正解できなかった人にもあらかじめ配っていたクラッカーのひもを力いっぱい引いて、華やかに「明けましておめでとう!」 私もさっきの札束を思い切り観客に向かって振ると、その札束の中から色とりどりのテープが飛び出して、「今年も楽しくがんばるぞ!」
かくして拍手と歓声のうちに、2006年は幕を開けたのであります。

〔少商(しょうしょう)〕肩関節前面から親指に向かう手の太陰肺経最後のツボ。
取穴:手の親指の爪、生え際と人差し指から遠い側の縁との交叉部に取る。
治効:まち針の頭ほどの点状出血を促して、咳・ノドの痛み・声がれに応用。

《作者より一言》
第74話でふれた自主制作映画「徐福の遺言」が完成。2006年1月27日から30日まで和歌浦の多目的ホール「アートキューブ」で公開。毎晩7時30分から。28日(土)と29日(日)は午後3時からも。上映時間88分。


 ●この文書は、当会会員である、宮本年起氏の創作です。

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